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救急のあるある「どうやって帰るねん問題」

2022/07/07
薬師寺 泰匡(薬師寺慈恵病院院長)

 救急では、「どうやって帰るねん問題」がしばしば勃発します。例えば、腰痛で救急搬送されて来た方。腎梗塞や大動脈解離のような“あかん”疾患でなければ、基本的には入院が必要なく、帰宅の方針になることが多いです。手術や処置が必要でない患者さんが急性期病床を埋めることは一般的になるべく避けたいところでしょう。

 というわけで、「運動時や重量物を持ち上げた時に発症した腰痛」といった、急性腰痛症(ぎっくり腰、魔女の一撃)ぽい方は、入院になる可能性がかなり低くなります。運動時の腰痛を訴えていた方が大動脈解離していたことが過去に一回ありましたが、普通は急性腰痛症を考えます。入院まではいらなさそうだけど、本人にとってみればひどい痛みで身動きが取れない状態が継続していたりしますから、独居高齢者だったりすると帰宅できないし、帰宅しても生活できないし……みたいな状況に陥ります。救急医は、救急搬入依頼の電話で「80代男性、腰つ……」まで聞いたあたりで、このような困った状況を思い浮かべてしまって、その時点から「どうやって帰るねん」と考え始めます。

著者プロフィール

薬師寺泰匡(薬師寺慈恵病院院長)●やくしじひろまさ氏。富山大学卒。岸和田徳洲会病院(岸徳)での初期研修を経て救急医療の面白さに目覚め、福岡徳洲会病院ERで年間1万件を超える救急車の対応に勤しむ。2013年から岸徳の救命救急センターで集中治療にも触れ、2020年から薬師寺慈恵病院に職場を移し、2021年1月からは院長として地方二次救急病院の発展を目指している。週1回岡山大学の高度救命救急センターに出入りし、ますます救急にのめり込んでいる。

連載の紹介

薬師寺泰匡の「だから救急はおもしろいんよ」
ER×ICUで1人盛り上がる救急医。愉快な仲間達と日本一明るい救命センターを目指して日々奮闘し、「ER診療の楽しさ」の伝承にも力を入れています。出会った患者のエピソードや面白かったエビデンス、ERを離れた救急医の日常までを綴ります。

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