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若いのに手足の脱力? アレを忘れないで

2022/06/09
薬師寺 泰匡(薬師寺慈恵病院院長)

 「歩けなくなったので救急要請」と聞いたら、脳卒中を想定するかもしれません。当然、ヤバいものから考えるのが救急ですから、脳卒中の可能性も考えなくてはならないのですが、大事なのは発症様式です。脳卒中は、脳が「卒(そつ:突然に)」として「中る(あたる:害により体が損なわれる)」と表現されるように、突然発症します。歩いていた人が突然歩けなくなったら脳卒中を考えますが、徐々に歩けなくなった人がいたら、ちょっと違うんじゃないかなと思います。

 以前、そんな状況(徐々に脱力してきて歩けなくなった)で搬送されてきた20歳代の男性がいました。「これは脳卒中ちゃうやろ」と思って血液ガス検査を行ったところ、低カリウム血症になっていました。「高カリウム血症はヤバい」という認識は一般的にあるのですが、低カリウム血症もヤバいです。QT延長を起こし、Torsades de Pointes(トルサード・ド・ポワント)のハイリスクとなるので、早急な補正が必要なのです。ただ、カリウムは大量投与ができず、補正がすぐにはできません。救急医の感覚としては、高カリウムより低カリウムの方が嫌だなと思います。

著者プロフィール

薬師寺泰匡(薬師寺慈恵病院院長)●やくしじひろまさ氏。富山大学卒。岸和田徳洲会病院(岸徳)での初期研修を経て救急医療の面白さに目覚め、福岡徳洲会病院ERで年間1万件を超える救急車の対応に勤しむ。2013年から岸徳の救命救急センターで集中治療にも触れ、2020年から薬師寺慈恵病院に職場を移し、2021年1月からは院長として地方二次救急病院の発展を目指している。週1回岡山大学の高度救命救急センターに出入りし、ますます救急にのめり込んでいる。

連載の紹介

薬師寺泰匡の「だから救急はおもしろいんよ」
ER×ICUで1人盛り上がる救急医。愉快な仲間達と日本一明るい救命センターを目指して日々奮闘し、「ER診療の楽しさ」の伝承にも力を入れています。出会った患者のエピソードや面白かったエビデンス、ERを離れた救急医の日常までを綴ります。

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