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科学の敗北~乳腺外科医の裁判~

2020/07/16
薬師寺 泰匡(薬師寺慈恵病院)

 4年前、術後の女性患者にわいせつ行為をしたということで乳腺外科医が逮捕された事件がありました。一審では外科医が無罪。そして先日、東京高裁は一審無罪判決を破棄し、懲役2年を決定しました(準強制わいせつ罪に問われた外科医、逆転有罪に)。この件に関しては、逮捕が話題になった当時にコラムを書きました(明日は我が身か、医師わいせつ逮捕事件)。

 自分なりに情報を整理して、(1)やろうと思っても無理がある、(2)真相がどうあれ逮捕は不当である、(3)せん妄の管理は難しい──といったことを書きました。正直言って、わいせつ行為があったのかどうか、僕には分かりません。個人的に思うところはあるものの、証拠が示す範囲で真実に近づいていくのであろうと、事件を眺めていました。その結果、犯罪行為の存在が認められれば驚きと落胆を持って受けとめたでしょうし、犯罪行為の存在が証明されなければ、「せん妄は恐ろしいな」と改めて受け止めたと思います。しかし今回の高裁の判断は、科学の敗北と呼んで差し支えないであろう、非常によろしくない点を含んでいます。

著者プロフィール

薬師寺泰匡(薬師寺慈恵病院)●やくしじひろまさ氏。富山大学卒。岸和田徳洲会病院(岸徳)での初期研修を経て救急医療の面白さに目覚め、福岡徳洲会病院ERで年間1万件を超える救急車の対応に勤しむ。2013年から岸徳の救命救急センターで集中治療にも触れ、2020年からいきなり管理職。地方二次救急病院で診療しながら、岡山大学の高度救命救急センターでますます救急にのめり込んでいる。

連載の紹介

薬師寺泰匡の「だから救急はおもしろいんよ」
ER×ICUで1人盛り上がる救急医。愉快な仲間達と日本一明るい救命センターを目指して日々奮闘し、「ER診療の楽しさ」の伝承にも力を入れています。出会った患者のエピソードや面白かったエビデンス、ERを離れた救急医の日常までを綴ります。

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