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主訴「僕、麻疹かもしれない」

2018/06/14
薬師寺 泰匡(岸和田徳洲会病院救命救急センター)

 先日、「僕、麻疹かもしれない」という主訴の方が救急外来を受診されました。これはなかなか珍妙な訴えですが、昨今のニュースをみていると、もしかしたらそういう人も出てくるかもしれないとは思っていました。しかし実際、そう訴える患者さんを前にすると対応の難しさに直面します。この方は、「皮疹を伴う発熱があり、麻疹を疑われて昼に検査→熱が下がらないので受診」というパターンでした。素直に自宅で検査結果を待ってておくれよと泣き言をこぼしたくもなります。本当に麻疹だった場合、病院職員は基本的に抗体チェックがされており、大きな問題になることは少ないはずですが、来院されている他の患者さんに感染しないとも限りません。疑うなら隔離が鉄則です。

 とはいえ、救急患者さんは突然やってきてしまうので、対応が後手になります。特にERには、ワクチンの適応のない1歳未満のお子様がいらっしゃる場合もままあります。そういう公衆衛生的に問題がある疾患は、お願いだから事前に保健所に尋ねるか病院に連絡をしてから受診してくれよと思うわけですが、そこまでリテラシーが高ければすでにワクチン打ってるわな……。

麻疹ってなんですぐ広がるの?
 ここのところ、麻疹患者が来院するという無視できない可能性について、当院でも医局会や院内の様々な会議で何度か言及されていました。会議では「麻疹って撲滅されたんじゃなかったの?」という発言もありました。本当におっしゃる通りで、WHOは2015年に日本を麻疹排除状態にあると認定してくれていたのです。しかし、ここ3年は立て続けに日本で麻疹患者さんが発生しております。

 認定の翌年に患者発生というのも悲しい話ですが、発端は海外からの持ち込みなんですよね。当時、バリから持ち込まれた麻疹の話を、このコラムでも書きました。僕もまさに同時期にバリにいたため、周囲からのなんともいえない視線を感じていたのですが、医療従事者として十分な抗体を持っていることを確認済みですので問題ありませんでした。

著者プロフィール

薬師寺泰匡(薬師寺慈恵病院)●やくしじひろまさ氏。富山大学卒。岸和田徳洲会病院(岸徳)での初期研修を経て救急医療の面白さに目覚め、福岡徳洲会病院ERで年間1万件を超える救急車の対応に勤しむ。2013年から岸徳の救命救急センターで集中治療にも触れ、2020年からいきなり管理職。地方二次救急病院で診療しながら、岡山大学の高度救命救急センターでますます救急にのめり込んでいる。

連載の紹介

薬師寺泰匡の「だから救急はおもしろいんよ」
ER×ICUで1人盛り上がる救急医。愉快な仲間達と日本一明るい救命センターを目指して日々奮闘し、「ER診療の楽しさ」の伝承にも力を入れています。出会った患者のエピソードや面白かったエビデンス、ERを離れた救急医の日常までを綴ります。

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