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蘇生って、いつになったらやめていいの?

2018/05/03
薬師寺 泰匡(岸和田徳洲会病院救命救急センター)

 当院は毎年4月になると新入職の研修医のために院内でICLSコースを開催し、研修医が実臨床に携わる前に、一次救命処置から二次救命処置まで学んでもらっています。院内ICLSコースでは幅広く色々な業種の方にも参加していただいており、これまでも医師だけでなく、看護師、薬剤師、臨床検査技師、放射線技師、臨床工学技士、理学療法士、そして医療事務の方にも、蘇生の知識と技術を広めています。
※ICLS(Immediate Cardiac Life Support):医療従事者のための蘇生トレーニングコース。突然の心停止に対する最初の10分間の対応と適切なチーム蘇生を習得することを目標とし、実技実習を中心にシミュレーションを通して学ぶ。

 資格によって、もちろんできることが異なります。薬剤投与、気管挿管などは制限がかかる行為の代表格かもしれません。しかし、何をするべきかを知っておき、自分ができる範囲でどのように気道確保するか、どのように蘇生に関わるかという視点で臨むことは、チームダイナミクスを最大限発揮するための重要なポイントだと思います。少なくとも、BLSは医療従事者だけではなく一般市民レベルでも推奨されることですから、病院職員は当たり前のようにできるようになっている方が良いと考えています。

インストは悩んだ
 普通に生きていれば蘇生に関わることはめったにないと思うのですが、救急外来で働いていると日常になります。なので、いろんなことを忘れがちになります。

 例えば、当たり前のようにBLSを行うということ。「呼びかけに反応がない人に対して躊躇なく胸骨圧迫を開始しましょう」と啓発することは簡単ですが、実際に行うにはハードルが高いものです。病院外やとっさの出来事だと感染予防がおろそかになるとかいう科学的な理由も考えられますが、精神的な負担の方が大きいかもしれません。技術と知識が広まっても、胸骨圧迫が始まらないことには技術と知識はないのと同じです。正しい知識と技術を伝えることはもちろんですが、どうやったらとにかく始めてもらえるかということを考えなくてはならんのです。「何もしなかったら死んじゃうんだよ」「何もしないのは見殺しと同じだよ」みたいに脅しても余計に萎縮させてしまうだろうし、変に責任を感じさせてしまったりすると思うので、別なアプローチが良いのではないかと思っています。

著者プロフィール

薬師寺泰匡(薬師寺慈恵病院)●やくしじひろまさ氏。富山大学卒。岸和田徳洲会病院(岸徳)での初期研修を経て救急医療の面白さに目覚め、福岡徳洲会病院ERで年間1万件を超える救急車の対応に勤しむ。2013年から岸徳の救命救急センターで集中治療にも触れ、2020年からいきなり管理職。地方二次救急病院で診療しながら、岡山大学の高度救命救急センターでますます救急にのめり込んでいる。

連載の紹介

薬師寺泰匡の「だから救急はおもしろいんよ」
ER×ICUで1人盛り上がる救急医。愉快な仲間達と日本一明るい救命センターを目指して日々奮闘し、「ER診療の楽しさ」の伝承にも力を入れています。出会った患者のエピソードや面白かったエビデンス、ERを離れた救急医の日常までを綴ります。

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