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大胸筋をピクつかせながらやってきた老婦人

2016/02/19
薬師寺泰匡(岸和田徳洲会病院救命救急センター)

 ちょっと前の話、外来に「筋肉がピクピクする」という人が来ました。そういえば僕も眼瞼がピクつくことがあります。ミオクローヌスともちょっと違う、けいれんとも違う何ともいえない現象ですが、感染症や中毒、神経の障害の他、ストレスでも起こるようです。ピクついているときは、「あぁ僕ストレス溜まってんだなぁ」とどこか他人事のように流しています。ピクつく瞼にイラついても、もっとストレスがたまるだけなので。

 俯瞰して見てみるというのは大事なことだと思います。患者さんから罵詈雑言を浴びせられることはたまにありますが、自らを客観視することでそこまで心が傷つくことなくやり過ごすことができます。どこか他人事のように、「あーあー、薬師寺君かわいそうに頭がおかしいとか言われてるわぁ」なんて眺めておけばよいのです。昔の某芸人がごとく、右から左へ受け流すことが大事です。

 とはいえ、ずっと体の一部がピクピクしているのもつらいものです。1時間罵詈雑言を浴び続けることはそうそうありません。1時間つらいことがおさまらなければ、耐え難くなるのも無理ありません。そういうわけで、冒頭の老婦人は外来を受診されたわけです。

アーノルド・シュワルツェネッガーでもボディビルダーでもありません
 診察してみると、この人は大胸筋がピクピクしておりました。アーノルド・シュワルツェネッガーみたいに立派な大胸筋が動いていると思わないでください。普通のおばあちゃんの大胸筋がピクピクしているのです!しかも左だけ!!!

著者プロフィール

薬師寺泰匡(薬師寺慈恵病院院長)●やくしじひろまさ氏。富山大学卒。岸和田徳洲会病院(岸徳)での初期研修を経て救急医療の面白さに目覚め、福岡徳洲会病院ERで年間1万件を超える救急車の対応に勤しむ。2013年から岸徳の救命救急センターで集中治療にも触れ、2020年から薬師寺慈恵病院に職場を移し、2021年1月からは院長として地方二次救急病院の発展を目指している。週1回岡山大学の高度救命救急センターに出入りし、ますます救急にのめり込んでいる。

連載の紹介

薬師寺泰匡の「だから救急はおもしろいんよ」
ER×ICUで1人盛り上がる救急医。愉快な仲間達と日本一明るい救命センターを目指して日々奮闘し、「ER診療の楽しさ」の伝承にも力を入れています。出会った患者のエピソードや面白かったエビデンス、ERを離れた救急医の日常までを綴ります。

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