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作曲家としてのビルロート、音楽家としての救急医

2015/05/07
薬師寺泰匡

 先日JATECで金沢に行った際に、当地の音楽家と少しだけ会うことができました。大学時代からお世話になっていた方で、オーケストラ・アンサンブル金沢のチェロ副主席奏者、大澤明氏です。仕事で金沢に来ていると知ると、「数分でも会いたい」と連絡をいただきました。病気やケガじゃないのに親戚でもない僕に会いたがっていただけるなんて本当にありがたいことです。こちらこそ数秒でも会いたいくらいです。

オーケストラはチーム医療の根幹
 実は僕は大学時代には大学のオーケストラに所属していました。小学生の頃からピアノをやっていて、中学校と高校ではサックスを吹いていたのですが、大学からチェロを始めました。大胆なチャレンジです(自分で言うな)。弦楽器なぞ触ったこともないところからの出発はなかなか大変でしたが、何年かやっているとそれなりにどうにかなるものです。仲間と一緒に交響曲を仕上げたりアンサンブルを楽しんだりする中で、人間的にもだいぶ変化させられました。

 オーケストラは音符と空気を読む場所なので、協調性を磨くには最高の環境だと思うのです。まさにチーム医療の根幹がそこにあります(お前空気読めてへんやないかというツッコミをしたい方がいらっしゃいましたら、昔は多分もっと読めていなかったと思うのでご容赦ください)。

 さてそんなオーケストラ活動、大学最後の定期演奏会で演奏した曲は、ブラームスの交響曲第2番とドヴォルザークのチェロ協奏曲でした。その時チェロ独奏を引き受けていただいたのが、ほかでもない大澤氏です。圧倒的にパワフルな音とキャラクターなのですが、練習の度に繊細なアドバイスをいただいたものです。

救急医はマイナスからゼロを生み、音楽家はプラスを得続ける
 JATECコースが終了してサンダーバードが発車するまで、1時間もありませんでしたが、金沢駅の店でしばし語らいつつ乾杯。昔話をしたり普段の練習の話などを聞いたりして、さらなるやる気をいただきました。いつも刺激をもらってばかりなのです。ありがたいことに、なぜか大澤さんに限らず第一線で活躍する音楽家と交流する機会に恵まれており、その度に音楽に対する真摯な態度やサービス精神に触れ、自分の世界で活躍できるようにならねばならんと奮起させられております。

 救急の仕事をするにつけ、自分の仕事はマイナスからゼロに戻すのが目標の仕事だと痛感するのですが、音楽は限りなくプラスを得られる仕事です。どうにかいくぶんかのプラスを得られるようなことがないかと日々考えさせられます。

著者プロフィール

薬師寺泰匡(薬師寺慈恵病院)●やくしじひろまさ氏。富山大学卒。岸和田徳洲会病院(岸徳)での初期研修を経て救急医療の面白さに目覚め、福岡徳洲会病院ERで年間1万件を超える救急車の対応に勤しむ。2013年から岸徳の救命救急センターで集中治療にも触れ、2020年からいきなり管理職。地方二次救急病院で診療しながら、岡山大学の高度救命救急センターでますます救急にのめり込んでいる。

連載の紹介

薬師寺泰匡の「だから救急はおもしろいんよ」
ER×ICUで1人盛り上がる救急医。愉快な仲間達と日本一明るい救命センターを目指して日々奮闘し、「ER診療の楽しさ」の伝承にも力を入れています。出会った患者のエピソードや面白かったエビデンス、ERを離れた救急医の日常までを綴ります。

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