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自称急性喉頭蓋炎!?

2015/04/30
薬師寺泰匡

 ある日のホットラインより。

「はい、岸和田徳洲会病院です」
救急隊「もしもし、○○救急隊の○○です。急性喉頭蓋炎の搬入依頼なんですけど…」
「え?喉頭蓋炎!?」
救急隊「はい、喉頭蓋炎の○歳男性の方です」
「ちょっと何言ってるか分かんないです…。咽頭痛とか嚥下困難とかじゃなくて喉頭蓋炎ですか??」
救急隊「はいぃ…喉頭蓋炎なんです…」

 救急隊は主訴と年齢性別を述べて患者のプレゼンテーションをすることがほとんどなのですが、これはレアケース。主訴が診断になっております…(汗)。しかも急性喉頭蓋炎ときたもんだ。

 急性喉頭蓋炎は、言わずと知れた内科emergency。嚥下するときに気管の蓋をする役割を持つ喉頭蓋ですが、ここに細菌感染が起こり炎症を起こして喉頭蓋炎となります。多くはインフルエンザ菌によるものです(みんなHibワクチンやってますか?)。重症例ではアレヨアレヨという間に喉頭蓋が腫れ上がり、気道を塞いで窒息してしまいます。なので、この病気を前にした救急医はめちゃくちゃ気合いが入ると同時にめちゃくちゃ恐怖も抱きます。気道確保できない場合は患者の死を意味します。

 そんな恐ろしい病気なのですが、この患者さんは自分が喉頭蓋炎だとおっしゃる…。「どうして分かるねん?」と小一時間問い詰めたい気持ちになったところで、その気持ちが言葉になって出ていました(笑)。

「いやいやいやいやいや、どうして分かるんですか?よりにもよって喉頭蓋炎?」
救急隊「そうですよねぇ…。でも咽頭痛でお近くの耳鼻科に行って、そう診断されたみたいなんです…」
「え!?喉頭蓋炎の診断されてご帰宅されたの???」
救急隊「そうみたいです…。で、帰宅後に咽頭痛で嚥下もできなくなってきたということで、救急要請です」
「えー!?今バイタルどんなですか?とりあえず急いで来てください…」

 というわけで、半信半疑で救急車の到着を待ちます。到着までに状態が悪くなっていたらどないしよ…ということで、アレコレ準備が必要です。気管挿管の準備はもちろんですし、気管挿管ができない場合もあります。喉頭蓋が腫れ上がると声門が確認できなくなります。ギリギリ見える声門にブジーを通して挿管するとか、ファイバー通して挿管するとか、外科的気道確保で逃げるとかいうことを考えておく必要があります。

著者プロフィール

薬師寺泰匡(薬師寺慈恵病院院長)●やくしじひろまさ氏。富山大学卒。岸和田徳洲会病院(岸徳)での初期研修を経て救急医療の面白さに目覚め、福岡徳洲会病院ERで年間1万件を超える救急車の対応に勤しむ。2013年から岸徳の救命救急センターで集中治療にも触れ、2020年から薬師寺慈恵病院に職場を移し、2021年1月からは院長として地方二次救急病院の発展を目指している。週1回岡山大学の高度救命救急センターに出入りし、ますます救急にのめり込んでいる。

連載の紹介

薬師寺泰匡の「だから救急はおもしろいんよ」
ER×ICUで1人盛り上がる救急医。愉快な仲間達と日本一明るい救命センターを目指して日々奮闘し、「ER診療の楽しさ」の伝承にも力を入れています。出会った患者のエピソードや面白かったエビデンス、ERを離れた救急医の日常までを綴ります。

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