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やけどの人が来たんやけど…

2015/04/16
薬師寺泰匡

 前回、小児の「やけど」の話を書きました(ほぼ某社電気ケトルの話になりましたが…)。今回も引き続きやけどの話です。題名がダジャレじみているのはお許しください。

熱傷の治療、どうしてますか?
 さて、ERをやっていると、軽症から重症まで、様々な重症度の熱傷を診る機会があります。「まずはABCの確保」(参考:達人は「息をするように」他人の呼吸を見る)というのは救急的には当然の行為なのですが、肝心の熱傷部分をどのように処置するかということについては様々な議論があります。治療方法は千差万別というのが現状です。

 例えば水疱ができました。これをどうしますか?

 破れてしまった水疱に関しては、だめになってしまった皮膚を綺麗に取り除いて新しい上皮が生まれるのを待つということで大体のコンセンサスがあると思うのですが、破れていない水疱をわざわざ破りにいくかどうか…。

 せっかくのバリア(破綻していない皮膚)があるのに、それを破りに行くと感染の温床になるのではないか…という考えや、水疱内に溜まった液体がかえって感染の温床になるのではないか…という考えがあり、実は破るか破らないかということに関しては議論があるところです。

 かの有名な「新しい創傷治癒」の先生は、水疱の上皮をきれいに取り除き、水疱底をしっかり水で洗って湿潤療法をすれば、めったに感染を起こすことなくきれいに治るとおっしゃいます。かの有名なUp To Dateでは、きれいで小さいものは温存して自然治癒を見込み、大きいものは破ったらどう?というスタンスのようです。積極的に破るというのは近年出てきた考えのはずですから、症例が蓄積されたら意外と安全に治療できるということが広まるのかもしれません。

結局上皮は破るのか、破らないのか?
 とはいえ、破ったほうがいいのか、破らないほうがいいのかということをフェアに論じるのはなかなか難しいです。破っていて感染したら、破ったのがよくなかったと思いたくなるのが人情ですし、破らずに感染したら、汚い皮膚をそのままにしておいたのがよくなかったと思いたくなるのが人情です。

 では僕はどうするかというと、僕は小さくて表皮がきれいなものは放っておきます。ただ、表皮が痛んでいたり大きな水疱であったりという時は、水疱を破って表皮を取り除くこともあります。

著者プロフィール

薬師寺泰匡(薬師寺慈恵病院)●やくしじひろまさ氏。富山大学卒。岸和田徳洲会病院(岸徳)での初期研修を経て救急医療の面白さに目覚め、福岡徳洲会病院ERで年間1万件を超える救急車の対応に勤しむ。2013年から岸徳の救命救急センターで集中治療にも触れ、2020年からいきなり管理職。地方二次救急病院で診療しながら、岡山大学の高度救命救急センターでますます救急にのめり込んでいる。

連載の紹介

薬師寺泰匡の「だから救急はおもしろいんよ」
ER×ICUで1人盛り上がる救急医。愉快な仲間達と日本一明るい救命センターを目指して日々奮闘し、「ER診療の楽しさ」の伝承にも力を入れています。出会った患者のエピソードや面白かったエビデンス、ERを離れた救急医の日常までを綴ります。

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