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電気ケトルの功罪

2015/04/09
薬師寺泰匡

熱い救急医もやけどは嫌い
 「やけど」するほど熱い救急医目指して頑張っているわけですが、本当にやけどさせるのはよろしくないと思っています。今回はやけど、熱傷の話です。

 ERに来る熱傷、特に小児の熱傷において、ここ数年救急医の間で悪評高い製品があります。電気ケトルです。電気ポットではなく、電気ケトルなのです。特にティ◯ァールの製品の評判がよくありません。

電気ポットはそれなりに安全
 電気ポットはいわずと知れた優れもの。数リットルの水を沸かして保温しておき、いつでも熱湯が注げる代物です。熱湯が入っているわけですから、人をやけどさせないようないろいろな工夫が凝らされています。電気コードに足を引っ掛ければコンセントが根元から外れるようになっているので、本体が倒れにくくなっています。

 また本体が転倒した場合でも、お湯が漏れることはほとんどありません。お湯を出すときは、ロックを解除してから注ぐという手間が必要な設計になっていることが多く、事故が起こりにくい造りとなっています。実際に、ポットのお湯を手にかけたという事故はあまり見た事ありません。

電気ケトルの安全対策はどうなの?
 で、電気ケトルなのですが、こちらは少量のお湯をさっと沸かして使うという用法で使用されることが多い製品です。多くの製品はコードが引っ掛かったらケトルが倒れてお湯がドバッと溢れます。子どもがコードに引っ掛かったり、親が使うあの道具を使ってみようと手を掛けたりしたら、ドバッとなるわけです。そして大量の熱湯をかぶって救急病院に搬送されるのです。

 大体の場合は机の上に置いてあるので、頭から熱湯をかぶって全身にやけどを負います。すぐに冷やしても後の祭り。子どもの皮膚はとても脆弱なので、かぶった瞬間、深い熱傷が起こることが確定的になります。

 電気ケトルは従来ヨーロッパでよく使われていました。近年、海外製品が日本の食卓を席巻したこともあり、日本製品も作られています。ポットでは有名な鼻の長い動物印社も電気ケトルを販売しておりますが、転がしてもお湯が溢れない仕組みを採用しております。さすが日本製品です。

 しかし!安全に気をつけたら売れるかというと、そうではないというのが単純ではないところです。人は利便性に加え、デザイン性に興味があります。そして価格です…。象のマーク社の製品は1万円を超える場合もありますが、ティフ◯ールのものは数千円です。どちらを買うかというとき、そりゃ安いに越したことはないと考えられても疑問はないわけです。

著者プロフィール

薬師寺泰匡(薬師寺慈恵病院)●やくしじひろまさ氏。富山大学卒。岸和田徳洲会病院(岸徳)での初期研修を経て救急医療の面白さに目覚め、福岡徳洲会病院ERで年間1万件を超える救急車の対応に勤しむ。2013年から岸徳の救命救急センターで集中治療にも触れ、2020年からいきなり管理職。地方二次救急病院で診療しながら、岡山大学の高度救命救急センターでますます救急にのめり込んでいる。

連載の紹介

薬師寺泰匡の「だから救急はおもしろいんよ」
ER×ICUで1人盛り上がる救急医。愉快な仲間達と日本一明るい救命センターを目指して日々奮闘し、「ER診療の楽しさ」の伝承にも力を入れています。出会った患者のエピソードや面白かったエビデンス、ERを離れた救急医の日常までを綴ります。

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