日経メディカルのロゴ画像

「CRP神話」を問う

2015/01/13
薬師寺泰匡

 CRPってご存知でしょうか?まぁ普通に臨床をやっている医師で知らない人はいないと思います。C反応性蛋白のことで、肺炎球菌菌体のC多糖体と沈降反応を起こすのでこの名前で呼ばれています。炎症時に肝臓で合成され血中に出てくるので、これを測定することで炎症の有無を見ることができます。

 炎症とは何ぞやという事については大学の病理学の最初の講義で習ったような記憶があります。炎症とは、体になにか有害な出来事が起きた時に生じる免疫反応の一連の流れのことです。組織の傷害が起こると、血液中のマクロファージ(白血球の一種)がサイトカインと呼ばれる蛋白を分泌します。マクロファージはいわゆる「見張り役」で、サイトカインは「何か障害が起こったよ」とほかの細胞に情報を伝達する物質です。サイトカインにもいろいろ種類があり、炎症反応(血管拡張や発熱)や細胞増殖、創傷治癒に関わります。

 ということでCRPは「細胞障害が起きた時に、体を防御するための蛋白質を作っておくれよとサイトカインに要請されて肝細胞から出てきた蛋白質の一種」ということができます。これを測定することで「何か炎症を起こしているのではないか」ということを予想することができるわけです。ちまたでは、細菌感染を疑うために測定されたりします…。

CRPは万能じゃない
 細菌感染症を起こすと大々的に組織障害が起こるので、サイトカインがどかーんと分泌され、結果CRPも高値になることが多いです。でも感染症の専門家の間では常識的なことですが、「CRP高値≠細菌感染の存在」です。炎症、細胞障害があればCRPは上昇します。癌でも膠原病でも上昇します。また、肝臓の機能が弱ければCRPなんか作れませんし、サイトカインを産生できなきゃCRPも出ません。生産量に関してはとてつもない個人差があります。細菌感染に対する感度と特異度に関しては、70%もないようです。

 ところがこのCRPはとても流行っています。子ども達の間で爆発的に流行している妖怪○ォッチと同じくらいの勢いで浸透し、信仰にも似たもてはやされ方をしています。CRPが高いと細菌感染があるのではないかとか、重症なのではないかとか、CRP万能説みたいな空気が漂っています。個人的な意見ですが、参考にしてもいいかもしれないけど、信じるのはどうかと思います…。というか、そもそも「CRP高値≠細菌感染」だし、「CRP高値≠重症」です。

 どうしても数値で重症度を見たいのであれば、プロカルシトニン(PCT)の方が相関しているようですのでそちらを見たらいいのではないかと思います( Bloos F, et al. Virulence 2013.11;5.154-60.)。ウイルス感染や真菌感染では上昇しにくい事も知られておりますし…。ただしPCTは敗血症を疑った場合のみ保険算定可能で、CRPよりはるかに保険点数が高いです。CRPよりはPCTを見る方がいいのではないかとは思いますが、これももちろん信じ過ぎるのはどうかと思います。

 僕は身体診察、バイタルサイン、自覚症状などと検査所見を総合的に勘案して目の前の患者さんの状態を把握するのが良いと思うし、CRPにそれらを蔑ろにする程の威力はないと思っています。ましてや、勝手な意味付けはすべきではないと考えます。なんで一昔前から言われ続けているこんな事を今更あえて書くかと言うと、やっぱりCRP信仰が強いなと日々実感するからです。

著者プロフィール

薬師寺泰匡(薬師寺慈恵病院)●やくしじひろまさ氏。富山大学卒。岸和田徳洲会病院(岸徳)での初期研修を経て救急医療の面白さに目覚め、福岡徳洲会病院ERで年間1万件を超える救急車の対応に勤しむ。2013年から岸徳の救命救急センターで集中治療にも触れ、2020年からいきなり管理職。地方二次救急病院で診療しながら、岡山大学の高度救命救急センターでますます救急にのめり込んでいる。

連載の紹介

薬師寺泰匡の「だから救急はおもしろいんよ」
ER×ICUで1人盛り上がる救急医。愉快な仲間達と日本一明るい救命センターを目指して日々奮闘し、「ER診療の楽しさ」の伝承にも力を入れています。出会った患者のエピソードや面白かったエビデンス、ERを離れた救急医の日常までを綴ります。

この記事を読んでいる人におすすめ