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救急医療にタブレットは必要か

2014/12/09
薬師寺泰匡

 救急患者の「たらい回し」という言葉がマスコミを中心にもてはやされて(?)から久しいです。現場の救急医の感覚を伝えておきますと、僕は「たらい回し」という言葉を使いません。「こないだ◯◯の患者さんの搬送依頼があったけど、◯◯の事情で受け入れられなくて、たらい回ししてしまいました…」なんて言いません。

実情を表さない「たらい回し」という言葉
 「たらい回し」と言う言葉は、たらいをくるくる回す様を表します。救急患者の「たらい回し」と言う場合は、患者を次から次へとくるくる送っていく様子を表しているようです。この言葉自体、おそらく事情を知らない人が思い付いて表現したんじゃないかと思います。たらい回しにした「たらい」は回すうちに元の位置に戻ってきますが、救急患者は1回断ったらめったに回ってこないですよね。本当にたらい回しにしてくれたら、いつかは搬送先が見つかりそうなものですが…。

 あと、「たらい回しにしている」と言う場合、主語は一体誰なんでしょうか?この言葉を使う人に聞いてみたいです。多分、自分も社会システムを一緒に構築していく大事な社会構成員であるという自覚がないのでしょう。

 とは言っても、困っているのは患者です。搬送先がなかなか決まらないという事態は、全くよろしくない。世の中には、現場で一生懸命頑張るだけでなく、こんな現象が起こる原因を考え、何か良いシステムを作って解決できないかと考えた人達がいます。ありがとうございます。

著者プロフィール

薬師寺泰匡(薬師寺慈恵病院)●やくしじひろまさ氏。富山大学卒。岸和田徳洲会病院(岸徳)での初期研修を経て救急医療の面白さに目覚め、福岡徳洲会病院ERで年間1万件を超える救急車の対応に勤しむ。2013年から岸徳の救命救急センターで集中治療にも触れ、2020年からいきなり管理職。地方二次救急病院で診療しながら、岡山大学の高度救命救急センターでますます救急にのめり込んでいる。

連載の紹介

薬師寺泰匡の「だから救急はおもしろいんよ」
ER×ICUで1人盛り上がる救急医。愉快な仲間達と日本一明るい救命センターを目指して日々奮闘し、「ER診療の楽しさ」の伝承にも力を入れています。出会った患者のエピソードや面白かったエビデンス、ERを離れた救急医の日常までを綴ります。

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