日経メディカルのロゴ画像

労働・オブ・ザ・リング「抜けない指輪物語」

2014/12/02
薬師寺泰匡

 ERという場所は、本当にいろんな患者さんがいらっしゃって、本当に様々な疾患や外傷を診る機会があります。軽症から重症まで様々な疾患がありますが、僕が勝手に名付けた救急3大「抜けない」シリーズがあるので紹介しておきます。

抜けないシリーズ1「針が抜けない」
 釣り針を刺してしまい、「抜けません」と言って救急外来を受診される人がいらっしゃいます。釣り針には返しがついているので、簡単には抜けません。返しを切ってから抜くか、返しが埋もれていれば麻酔して押し出して返しを切って引き抜くという事になりますが……。

 実はもっと簡単に、糸1本で抜く方法があります。興味がある人はぜひ、こちらの文献を読んでみて下さい。string-yank techniqueという方法です。糸を引っかけて引っ張るだけです。半信半疑でしたが、人でやる前に豚肉に釣り針を引っかけて試してみたところ、面白いくらいに抜けます。ありがとう豚!!

抜けないシリーズ2「穴から抜けない」
 「恥ずかしくて穴があったら入りたい」といいますが、穴に入れた結果恥ずかしいことになる人も世の中にはいらっしゃいます。肛門に異物を挿入して抜けなくなったとか、尿道に異物を挿入して抜けなくなったとか…。経肛門直腸異物なんてそんな毎日毎日見るわけではありませんが、救急医が集まったときにこの話題を出すと必ず経験症例を何例か出し合うことができ、語り合うことになります。

 そして、入れてしまった人はだいたいこう言うようです。
 「座ったらそこにあったものが入った」

 入れたのか入ったのかなんて野暮なことは聞きません。本人が痛いと言えば痛い。入ったといえば入ったのです。中には、お尻からバットが生えている人もいます。明らかに自分の股下より長いバットの上にどうやって座ったのかとか、たまたまバットが立っていてその上に全裸で座ってしまう可能性って星に生命が誕生する確率より低いんじゃないかとか考えてしまいますが…。

 この経肛門直腸異物についても、日本で報告された140例を検討した文献があるので紹介しておきます。これによると男女比は133:7で圧倒的に男性の症例が多いのだそうです。日本男児はどうなってるんだ…。

著者プロフィール

薬師寺泰匡(薬師寺慈恵病院)●やくしじひろまさ氏。富山大学卒。岸和田徳洲会病院(岸徳)での初期研修を経て救急医療の面白さに目覚め、福岡徳洲会病院ERで年間1万件を超える救急車の対応に勤しむ。2013年から岸徳の救命救急センターで集中治療にも触れ、2020年からいきなり管理職。地方二次救急病院で診療しながら、岡山大学の高度救命救急センターでますます救急にのめり込んでいる。

連載の紹介

薬師寺泰匡の「だから救急はおもしろいんよ」
ER×ICUで1人盛り上がる救急医。愉快な仲間達と日本一明るい救命センターを目指して日々奮闘し、「ER診療の楽しさ」の伝承にも力を入れています。出会った患者のエピソードや面白かったエビデンス、ERを離れた救急医の日常までを綴ります。

この記事を読んでいる人におすすめ