日経メディカルのロゴ画像

バリアトリック手術で糖尿病を治療(その3)
減量の勝負どころ、術後1~2年にチームの総力を結集

2012/01/24
柳澤貴裕

 前回は、肥満を外科的に治療するバリアトリック手術4種とそれぞれの特徴について紹介しました。今回はマウントサイナイ医科大学を例にとり、チーム医療で当たる肥満症の診療体制を紹介したいと思います。

 肥満症は身体的要因、心理的要因、社会的要因と、多方面からの複合的な原因で発症し、投薬や手術といった治療法だけでは解決できません。そのため、バリアトリック治療には肥満症診療の経験が豊富な外科医、消化器内科医、内分泌内科医、精神科医、麻酔科医、形成外科医※1、診療看護師(ナースプラクティショナー)、看護師、栄養士、臨床心理士、ソーシャルワーカーといった多職種から成るチームの力、いわゆるMultidisciplinary Team Medicineが必要となります。それらの専門家たちがいかにチームワークを組み、多方面からの医療サービスを提供できるかがバリアトリック治療の成否の鍵を握ります。

多様な肥満患者に対応する多様なソリューション
 米国外科学会(ACS)でも、「バリアトリック手術はチーム医療の体制が確保されている施設が行う」ことを理想的としています。ACSはそういった施設に対してのみ、傘下のBariatric Surgery Center NetworkBSCN)を通じ、Bariatric Centerの認定をしています。

 バリアトリック手術のチーム医療でまず必要となるのは、経験豊富な外科医です。高度肥満患者の腹腔鏡手術は技術的な難易度が特に高いためです。1000件以上のバリアトリック手術の経験がある外科医がいれば、術式選択の際、難易度に左右されることはあまりなく、患者に最も適した術式を選べます。当然、手術時間が短くなるので、術後の合併症が極めて少なくなるというメリットもあります。

 肥満症の患者のプロフィールは実に多様です。そこで、内分泌内科医は、個々の患者に最も適した術式を選ぶ上で重要な役割を果たします。バリアトリック手術による糖尿病の改善率は、糖尿病の罹病期間が短い(5年以内)ほうが高くなると期待でき、インスリン依存性およびインスリン分泌能などの指標により、術後の転帰はある程度予測できます。さらに、バリアトリック治療の経験が加わって、内分泌内科医は個々の患者に対する術式を選択します。

 このシリーズ第1回にてデータを紹介しましたが、手術による糖尿病の改善率はBPD-DSRYGBSleeve GastrectomyGastric Bandingの順となり、90%から50%ほどまで、かなり幅があります。しかし、成績が一番良いBPD-DSには栄養吸収の低下が著しいため、術後の管理により注意が求められるという特徴があります。たんぱく質と脂肪の消化不良のリスク、食生活に対する患者のコンプライアンスも考える必要があります。

著者プロフィール

柳澤貴裕(マウントサイナイ医科大学准教授、内分泌科研修プログラムディレクター)●やなぎさわ たかひろ氏。1994年ブラウン大医学部卒。マサチューセッツ州立大での内分泌フェローを経て2001年現職。09年から東京女子医大招待教授と米国日本人医師会副会長。

連載の紹介

アメリカの肥満と糖尿病
バリアトリック手術にインスリンポンプの使い方…。肥満大国である米国の肥満症および2型糖尿病の診療事情は日本とはかなり異なります。日米の差異を踏まえつつ、米国における糖尿病診療の現状を米国内分泌科指導医の視点から紹介します。

この記事を読んでいる人におすすめ