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第7回《予防接種編その2》(最終回)
目指せ! 2012年の麻疹排除

2008/05/22

 麻疹予防接種に関してよく寄せられる相談の一つに、定期接種の対象でない人に任意接種を勧めるべきか、というものがある。今般始まった5年間限定の第3期・第4期接種についても、例えば現在中学2年生の人が、接種対象である高校3年生になるまで任意接種を受けずに待った方がいいのか、という問題もある。


1回も受けていない人は今すぐ接種を
 任意接種については、全額被接種者の自己負担であることに加え、副反応が生じた際の救済措置が定期接種ほど手厚くないことなどから、医師の側から強く勧められない側面がある。だが、もし私なら、麻疹未罹患で今までに一度も麻疹含有ワクチンを接種したことがない人であれば、任意接種であっても今すぐ受けた方がいい、とアドバイスするだろう。

 0歳児については、基本的には周囲の人間が麻疹の免疫を付けることで守ってほしいと考えている。しかし、保育所に通っていて、地域で麻疹が流行しているなど、緊急的な防衛手段が必要と考えられる場合は、保護者の希望に基づき任意接種を行うこともある。その場合は、母体からの移行免疫の影響で十分な抗体産生が得られないことがあるため、1)最低でも生後6カ月を過ぎてから接種する、2)1歳を過ぎたら第1期のMRワクチンの定期接種を必ず受け直す、が条件となる。

 2回目の接種については、ケース・バイ・ケースだが、
1)海外(特に、麻疹が流行している国あるいは麻疹が既に排除されている国)に行く予定がある人
2)現在麻疹が流行している地域に住んでいる人
3)仕事やレジャーなどで流行地域へ行く予定のある人
4)医療機関・教育機関・保育福祉機関に勤務している人
5)医療・教育・保育福祉関連の実習に参加する人
6)今後妊娠の予定がある女性
 などには、「1回予防接種をしていても、5%未満の人は免疫が付いていないことがあり、2~3割の人は免疫が不十分になってきている可能性がある」ということを伝え、任意接種を検討してもらってもいいだろう。接種の可否を決めるための麻疹抗体価の測定は、時間と費用がかかるため、必ずしも勧める必要はない。

 上記の4)にも挙げているが、医師自身を含む医療スタッフの備えも忘れてはならない。医療スタッフのうち、麻疹未罹患で、麻疹に対する免疫のない者や、麻疹含有ワクチンの接種記録のない者は、平時に予防接種を受けておくべきだろう。もし、こうした対策を怠り、医療スタッフが麻疹に罹患して患者にうつすようなことがあれば、患者から訴訟を起こされることも覚悟しておかなければならない。

著者プロフィール

多屋馨子(国立感染症研究所感染症情報センター第三室〔予防接種室〕室長)●たや けいこ氏。1986年高知医科大学(現高知大学)卒。2001年国立感染症研究所感染症情報センター主任研究官。

連載の紹介

【臨床講座】麻疹の流行に備えよ
「はしかは子供の病気」というのは、もはや過去の常識。非常に強い感染力を持ち、時に健康な人を死に至らしめる麻疹に、日常診療でどう立ち向かえばいいのか。診断・治療・予防に役立つ基礎知識をまとめました。

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