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第6回《予防接種編その1》
麻疹ワクチン推進は草の根作戦で!

2008/05/16

 麻疹ウイルスが強力な感染力を持ち、ひとたび麻疹を発症してしまえば重篤な合併症を防ぐ手立てがないことを考えると、最大の防御策は、平時のワクチン接種以外にはない。他の定期予防接種の対象疾患と同様に、麻疹は治療する病気ではなく、予防する病気だと考えるべきだろう。

 現在、わが国で接種可能な麻疹含有ワクチンは、麻疹・風疹混合ワクチンMRワクチン)と麻疹単抗原ワクチンである。麻疹含有ワクチンを1回接種すると、95%以上の割合で麻疹に対する免疫を獲得できるといわれる。しかし、中には1回の接種では免疫を獲得できない人が5%未満存在する(一次ワクチン不全:primary vaccine failure)。また、一度は免疫を獲得したものの、年月を経るうちに徐々に抗体価が低下する場合もある(二次ワクチン不全:secondary vaccine failure)。

 麻疹が毎年のように全国規模で流行していた20~30年以上前は、ワクチン接種後に自然感染を受けることによって免疫が増強される「ブースター効果」を期待できたが、現在はこのブースター効果を受ける機会は減っている。このため、今の若年者は、1回の麻疹予防接種の後、10~20%弱の割合で二次ワクチン不全が起きると考えられている。一方で、麻疹の流行は制圧されたわけではないので、麻疹に未罹患で、1)麻疹含有ワクチンを接種したことがない、2)一次ワクチン不全、3)二次ワクチン不全―のいずれかに該当する人は、常に麻疹発症のリスクにさらされていることになる。

中1と高3相当者への追加接種が開始
 このような人たちに対する免疫付与・強化を目的に、2006年4月から、予防接種法に基づく定期予防接種の一環として、MRワクチンの第2期(小学校入学前1年間の幼児)の接種が始まった。

 しかし、それだけでは、現在の流行の主体であり、麻疹の免疫を持つ人が少ない10代の若年者をカバーすることができない。そこで、2008年4月から5年間の時限措置として、中学1年生相当年齢の者と高校3年生相当年齢の者に対するMRワクチンの追加接種(第3期、第4期)が、定期予防接種に組み込まれた(表1)。

著者プロフィール

多屋馨子(国立感染症研究所感染症情報センター第三室〔予防接種室〕室長)●たや けいこ氏。1986年高知医科大学(現高知大学)卒。2001年国立感染症研究所感染症情報センター主任研究官。

連載の紹介

【臨床講座】麻疹の流行に備えよ
「はしかは子供の病気」というのは、もはや過去の常識。非常に強い感染力を持ち、時に健康な人を死に至らしめる麻疹に、日常診療でどう立ち向かえばいいのか。診断・治療・予防に役立つ基礎知識をまとめました。

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