
麻疹の感染力の強さは、インフルエンザの比ではない。接触感染や飛沫感染だけでなく、空気感染(飛沫核感染)も起こすため、たとえ体育館のような広い空間であっても、空調が共通していれば、周囲の人間への感染は起こり得る。麻疹患者が1人いるだけで、周りにいる免疫を持たない人(感受性者)の12~18人が麻疹を発症するといわれている。
実際に、麻疹患者と薬局ですれ違っただけ、あるいは病棟の同じフロアの端と端に離れて座っていただけの人が、その後麻疹を発症したという事例がある。2007年には、外来で診察待ちをしていた成人の麻疹患者が、25分という短い時間内に、同じフロアにいた6人の小児科患者に麻疹を感染させた事例も報告されている。
そのような強力な感染力を持つ麻疹患者が外来を受診、あるいは病棟内で発症が確認された場合、医療機関としてどのような2次感染対策を取ればよいのだろうか。
カーテン隔離は意味をなさない
まず、患者を速やかに隔離すべきなのはいうまでもないが、上述のように、診断が付く前に、待合室などで周囲に感染を広げてしまうのが悩ましいところだ。
したがって、特に地域で麻疹が流行している時期には、あらかじめ院内に張り紙をして、発熱と発疹がある、または麻疹患者との接触が明らかで発熱やカタル症状があるなど、麻疹が強く疑われる場合には、できるだけ受診前に相談するよう呼び掛けておくことが望ましい。
麻疹が疑われる患者については、一般患者とは別の出入り口から別室に誘導する、診察時間帯をずらす、などの対応をする。もし、こうした患者が連絡なく受診した場合にも、受付の段階で速やかに申し出てもらうよう、院内掲示をしておくことが重要である。
麻疹患者を隔離する場所は、空調が独立した個室であることが求められる(乗用車内などの閉鎖空間でも可)。空気感染を防ぐという意味では、カーテン隔離では到底不十分であることを肝に銘じておきたい。