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GPが診る性犯罪・性暴力の被害(女性編)

2022/07/04
谷口 恭(太融寺町谷口医院)

 性犯罪・性暴力の被害女性へのケアは簡単ではない。“急性期”の場合は、まず外傷の確認、緊急避妊の必要性を判断し、次いで性感染症のリスク判定を行う。場合によってはHIV感染の予防のためのPEP(曝露後予防)やHBVワクチン(およびグロブリン製剤の投与)を検討することになる。PEPが可能でない性感染症については、潜伏期間と症状に注意しながら追って必要な検査を実施していくことになる。

 これだけでもけっこう大変なのだが、これで十分というわけではない。いわばこれらは狭義の医療行為にすぎず、広義の医療としての社会的・心理的なケアも求められる。「性暴力の被害だから警察に相談しますね」と初診時に言う患者はほとんどおらず、たいていの被害女性は警察へのハードルの高さを感じている。

 警察には性被害の専用ダイヤルがあり、トレーニングを受けた専門の警官(通常は女性)が対応することを伝え、専用回線の#8103(全国共通)を伝えることになる。自治体によってはこの番号(#8103)の入ったカードを用意しているのでそれを渡してもよい。ところで、この8103という並び、「ハートさん」と覚えるそうだが、「はい、お産」と読んでしまう被害者もいるのではないだろうか。性暴力の被害者に「お産」はまずいわけだが僕の考え過ぎだろうか。ちなみに、僕がこの番号を初めて見たときに思わず出てしまった言葉は「はい、おっさん」。「性被害の女性におっさんって……」とひとりごちてしまった。8103という数字をみて、東京人なら素直に「ハートさん」と覚えられるのだろうが、関西人には馴染めない。実際、本稿を書くに際し、「あれ? 『はい、おっさん』じゃなくて、『はい、お産』でもなくて、正解はなんだかったかなぁ……」と、「ハートさん」にたどり着くのにネット検索が必要になった。

著者プロフィール

たにぐち やすし氏●1991年関西学院大学社会学部卒。商社勤務を経て、2002年大阪市立大学医学部卒。研修医終了後、タイのエイズ施設でのボランティアを経て大阪市立大学医学部総合診療センター所属となり、現在も同大非常勤講師。2007年に大阪・梅田に開業。日本プライマリ・ケア連合学会指導医。労働衛生コンサルタント。

連載の紹介

谷口恭の「梅田のGPがどうしても伝えたいこと」
患者さんに最も近い立場で医療を行いたい……。それを実現するため医師6年目に資金300万円で開業した谷口氏。「どのような人でも、どのような症状でも受け入れる」をポリシーに過去11年で3万人以上の初診患者を診察した経験を基に、開業医のやりがいや苦労、開業医に求められるミッションを若手医師向けに語ります。

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