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ポストコロナの外国人医療をどうする?

2022/06/06
谷口 恭(太融寺町谷口医院)

 複数の大学関係者の話によると、頑なに厳しい制限を崩さなかった外国人の留学生の受け入れが4月になって突如として緩和されたそうだ。他国に比べて厳格すぎる新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の水際対策のために、日本への留学を希望する世界各国の大学生が失望していることが欧米のメディアで繰り返し伝えられていた。何らかの外圧があったのかどうかは知らないが、政府が留学生の門戸を開放したことは歓迎すべきだ。

 さらに、6月からは訪日外国人観光客を再び受け入れることになりそうだ。現在(本稿執筆時の5月26日)では1日当たり1万人と定められている入国者数の上限が2万人に引き上げられる方針が固まったと報じられている。

 一次は猖獗(しょうけつ)を極めたCOVID-19は軽症化が進み、国内外問わず、特に若者の間では「単なるかぜ」に成り下がった。当院の診察室でも「そろそろ海外旅行を考えている」「これから海外出張が増えそうだ」とコメントする患者が明らかに増加している。

 いわゆるインバウンドがコロナ禍前に戻ることを期待して、あるいは確信して、外国人の興味を惹く日本風の内装を施した新店舗をオープンする飲食店についても報道されている。2025年には大阪市で日本国際博覧会(万博)が開催される。

 報道によると、米国が3月に実施したQT(量的引き締め)がきっかけとなり、大幅の円安が進行している。外国人から言われ続けている「日本は物価が安い」は現在も健在であり、最近食品を中心に様々な商品が値上げされているが、他国ほどではないと聞く。そして、日本は他国に比べて治安が良く、街はきれいで、食材が豊富で、多数の観光名所がある国だ。

 これだけの条件がそろったのだ、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の新しい変異株の強毒化、ウクライナ戦争の長期化や北朝鮮の動向などからの第三次世界大戦勃発などのリスクもないわけではないが、コロナ禍前、あるいはそれ以上に訪日外国人が増える可能性が高い。

 経済界はそれを歓迎し、失業者は減少し、大学生にとっての売り手市場が復活するだろう。一方、訪日外国人が増加することで懸念されることもある。我々医療者の視点からみれば、SARS-CoV-2の新しい株の流行、Monkeypoxを含めた新興(あるいは再興)感染症のまん延、といった問題もあるが、やはり最大の懸念事項は「急増する外国人患者にどのように対応するか」だろう。

著者プロフィール

たにぐち やすし氏●1991年関西学院大学社会学部卒。商社勤務を経て、2002年大阪市立大学医学部卒。研修医終了後、タイのエイズ施設でのボランティアを経て大阪市立大学医学部総合診療センター所属となり、現在も同大非常勤講師。2007年に大阪・梅田に開業。日本プライマリ・ケア連合学会指導医。労働衛生コンサルタント。

連載の紹介

谷口恭の「梅田のGPがどうしても伝えたいこと」
患者さんに最も近い立場で医療を行いたい……。それを実現するため医師6年目に資金300万円で開業した谷口氏。「どのような人でも、どのような症状でも受け入れる」をポリシーに過去11年で3万人以上の初診患者を診察した経験を基に、開業医のやりがいや苦労、開業医に求められるミッションを若手医師向けに語ります。

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