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“副腎疲労症候群”に悩む人たちと自称専門家の治療内容

2022/05/31
谷口 恭(太融寺町谷口医院)

 その“病気”、「副腎疲労症候群」の名前を聞いたのは僕が開業して間もない頃、2007年の夏頃だったと記憶している。開業した当初から「困ったことがあれば何でも相談してください」と至るところで言っていたために、「他で診てもらえなかった」とか「どこを受診していいか分からない」という人たちが集まるようになってきていた。

 「自分は副腎疲労症候群にかかっているに違いない」と信じて疑わないその20歳代の女性は、まだ身体所見はとっていないが、問診時での印象では特に何かを患っているようには見えない。健康診断での異常も指摘されたことがないという。

 では何が問題なのか。とにかく「疲れやすい」のだと主張する。だが、問診を重ねると、営業職で全国を飛び回り地域での飲食を楽しんでいること、趣味は海外旅行で長期休暇のたびに海外を訪れていること、休日にはゴルフも楽しんでいること、などから医学的な介入が必要な疲労があるとは思えない。

 どうやらインターネットで入手した情報から、自身が以前に比べて疲れやすいのは副腎疲労症候群に罹患しているからで、この病気を治さないことには元気が取り戻せないと信じているようだ。

 こういうときは「上から目線」になってはいけない。「そんな病気はありません」などと言えば、この患者との関係が瞬時に破綻することは明らかで、慎重に言葉を選ばなければならない。そこで、表現と表情、それに声のトーンに注意しながら、検査も治療も不要であることを説明したのだが、そんな工夫もむなしく、彼女は怒って席を立った。

著者プロフィール

たにぐち やすし氏●1991年関西学院大学社会学部卒。商社勤務を経て、2002年大阪市立大学医学部卒。研修医終了後、タイのエイズ施設でのボランティアを経て大阪市立大学医学部総合診療センター所属となり、現在も同大非常勤講師。2007年に大阪・梅田に開業。日本プライマリ・ケア連合学会指導医。労働衛生コンサルタント。

連載の紹介

谷口恭の「梅田のGPがどうしても伝えたいこと」
患者さんに最も近い立場で医療を行いたい……。それを実現するため医師6年目に資金300万円で開業した谷口氏。「どのような人でも、どのような症状でも受け入れる」をポリシーに過去11年で3万人以上の初診患者を診察した経験を基に、開業医のやりがいや苦労、開業医に求められるミッションを若手医師向けに語ります。

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