日経メディカルのロゴ画像

コモンなのに薬がなかった「酒さ」に朗報!

2022/05/09
谷口 恭(太融寺町谷口医院)

 ありふれたcommon diseaseなのにもかかわらず、ドクターショッピングを繰り返すことが多い皮膚疾患の代表、それが酒さ(rosacea)だ。

 僕が皮膚科で研修を受けていた頃の記憶で言えば、外来の初診患者の150人に1人くらいが酒さだった。150人に1人は少ないと思われるかもしれないが、皮膚科は他科に比べると初診患者数が多いのが特徴で、毎日外来を朝から晩まで見学していると週に1人くらいは遭遇することになる。

 ところが、当院ではこの割合よりもはるかに多くの患者が酒さの治療を求めて受診している。僕は皮膚科専門医ではないし、クリニックの宣伝の類はほとんど何もしていない。つまり、当院は「皮膚で困ったことがあるから“最初に”受診しよう」という医療機関ではないのだ。

 これは他の症状や疾患についても言えることだが、当院を初診で受診するのは、友人、パートナー、同僚、家族などからの紹介、つまり口コミが恐らく8割くらいで、残りの2割が「ネット検索で見つけた」という患者だ。それも「時間をかけて見つけた」というケースがほとんどだと思われる。

 なぜなら「大阪市北区 皮膚科」などでグーグル検索をかければ皮膚科専門クリニックが上位に出てくるわけだし、その皮膚の症状だけを最も効率よく治してもらうには皮膚科専門クリニックを受診するのが得策だと誰もが考えるからだ。ちなみに、この検索ワードで実際にグーグルを試してみると、やはり当院は少なくとも上位30位内には検出されなかった。 

 では、口コミを除いたとき、どのような皮膚疾患を有する患者が当院を受診するのかというと、これは2つに分かれる。1つは、皮膚症状以外に何らかの症状があるときで、「アトピーと喘息を同時に診てほしい」というのがその代表だ。「この皮膚症状はなんらかの内科的疾患や皮膚以外のことが原因かもしれない」と患者が考えている場合も少なくない。

 皮膚疾患の患者が当院を受診するもう1つのパターンは「他の医療機関(皮膚科専門医)で治らなかったから……」というもの、つまりドクターショッピングだ。我々医療者の論理では「治らない場合はその先生に相談して別のところへの紹介状を書いてもらってください」となるわけだが、一般の患者はそうは考えないようで、実際、このような「正論の忠告」を行うと患者を怒らせることになりかねない。

 よって、ドクターショッピングを繰り返している患者が受診した場合、正論で諭すような野暮なことはせず、まずは患者が本当はそんなことしたくないのだけれどドクターショッピングをせざるを得ない状況になったことに対して理解を示すべきだ。

著者プロフィール

たにぐち やすし氏●1991年関西学院大学社会学部卒。商社勤務を経て、2002年大阪市立大学医学部卒。研修医終了後、タイのエイズ施設でのボランティアを経て大阪市立大学医学部総合診療センター所属となり、現在も同大非常勤講師。2007年に大阪・梅田に開業。日本プライマリ・ケア連合学会指導医。労働衛生コンサルタント。

連載の紹介

谷口恭の「梅田のGPがどうしても伝えたいこと」
患者さんに最も近い立場で医療を行いたい……。それを実現するため医師6年目に資金300万円で開業した谷口氏。「どのような人でも、どのような症状でも受け入れる」をポリシーに過去11年で3万人以上の初診患者を診察した経験を基に、開業医のやりがいや苦労、開業医に求められるミッションを若手医師向けに語ります。

この記事を読んでいる人におすすめ