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新型コロナ、大阪では実質的に理想の5類相当へ

2022/04/25
谷口 恭(太融寺町谷口医院)

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行が始まった2年前の春、当院は(というより僕は)ほとんど毎日のように保健所と激しいやり取りを交わしていた。あまりにも通り一辺倒なその機械的な対応についつい大声をあげ(そうになっ)たことも一度や二度ではない。

 「臨床的にはまずCOVIDで間違いないからPCRをお願いしたい」と交渉しても「条件を満たさないためできません」としか言われない。今では信じがたいことだが、まだこの当時は「外国人との接触がなければ検査対象外」だったのだ。仕方なく「不明熱」として、大きな病院に受け入れてもらい、そこで新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が陽性だった事例は本連載でも紹介した。

 しかしその後、PCRを一般の医療機関で実施することが許可され、最初は自費でしかできなかったが、その後保険請求、さらには公費で患者負担ゼロが認められるようになると、当院にとっての保健所は「救世主」のような存在となった。

 なにしろ保健所に「入院が必要です」と言えば、直ちに入院先を確保してくれるのだ。しかも、外国人であろうが、HIV陽性者であろうが、精神疾患(特に薬物依存症)であろうが、保健所から大きな病院に対して出される「依頼」は事実上の“命令”のようで、これまでどのような患者であっても、COVID-19関連で病院から拒否されたケースはほぼ皆無だ。これまでは「通訳を連れてこないなら外国人は診られません」と言っていたある大病院が、日本語のできない米国人をすんなりと受け入れてくれたときは拍子抜けしてしまった。

 ちなみに、当然のことながらCOVID-19以外の「重症例」については、保健所は関与してくれない。先日、(違法)薬物中毒が原因で診察終了後に意識が低下し痙攣を生じた患者の受け入れ先を探したときも大変苦労した。どこの病院に電話しても「(違法)薬物中毒で……」と言ったとたん、電話の向こうの看護師や医師の声が変わるのがおもしろいほどよく分かる。一応は「少しお待ちください」と“検討”の時間を取るのだが、結果は「うちでは診られません」ばかり。最終的に受け入れてくれたのは救急車で1時間以上かかる他府県の病院。僕も同乗したため、帰りのタクシー代は予想外の出費となった。これだけ手間と時間をかけて大赤字だ......。

 話をCOVID-19に戻そう。過去のコラム「新型コロナ、2類でも5類でも、これだけはお願いしたいこと」でも述べたように、僕はCOVID-19を現状の「2類相当」から「5類」に移行するのには反対している。その最大の理由は「保健所の力なしでは入院先が見つからない患者が出てくる」のは火を見るより明らかだからだ。

 先述したような属性、すなわち「日本語ができない外国人」「HIV陽性者(ただしエイズを発症しているわけではない)」「薬物依存症の患者」にあまり馴染みがない医療者にはピンとこないかもしれないが、こういった患者を紹介するのにはとても骨が折れるのだ。これら以外でも、例えば統合失調症の既往があるという理由で(寛解状態が長期間続いていたとしても)入院を断られることもある。

 では、現状の「2類相当」で何も問題がないのかというと、そういうわけではない。当院のように高齢者よりも働く若い世代を中心に診ているクリニックにとっては、COVID-19は大半が入院の適応にはならない。我々の任務は、大半が軽症で済む患者の様子を日々電話再診やオンライン診療を介してフォローし、重症化の兆候が表れていないかどうかを確認することだ。

 この「診察」を最も効率よく、最も正確にすることができるのは、患者に会ったことのない保健所の職員でなく、我々かかりつけの医療機関であることは明らかだ。だから、届出自体は公衆衛生学的に必要だが、その後の電話やオンライン診療はかかりつけ医が行うべきで、保健所には入ってもらわなくて全く問題がない。やってくれていることに対して「要りません」と失礼なことは言えないけれど、実際、後から患者に尋ねても「保健所から電話をもらって嬉しかった」という話は最近はあまり聞かない。

 つまり、いっそのこと、届出はするものの、その後のケアは重症化するまではかかりつけ医、重症化しそうになれば「保健所を介して入院」というシステムにしてしまえば全てすっきりすると思っている。

 「コロナを診てくれるクリニックはそんなに多くないのでは?」という声もあるかもしれないが、大阪府ではこの問題も既に解消されている。2021年の夏ごろまでは、「かかりつけ医から見放された……」と言って問い合わせてくる当院未受診の発熱患者が非常に多かったが、最近ではほとんどなくなった。

 正確に言えば、そういう患者に対しては、大阪府の発熱外来のホームページを案内し(「大阪府」「発熱外来」で検索すればすぐに出てくる)、「かかりつけ患者以外の受入が可能な医療機関一覧」のリストにあたってもらえば解決する。半年ほど前までは「リストを見て探したけれど見つからなくて……」という患者もいたが、ここ数カ月はほぼ皆無となった。つまり、大阪府では数カ月前から「どこに問い合わせても検査が受けられない」という事態はほぼ解消されたのだ。

著者プロフィール

たにぐち やすし氏●1991年関西学院大学社会学部卒。商社勤務を経て、2002年大阪市立大学医学部卒。研修医終了後、タイのエイズ施設でのボランティアを経て大阪市立大学医学部総合診療センター所属となり、現在も同大非常勤講師。2007年に大阪・梅田に開業。日本プライマリ・ケア連合学会指導医。労働衛生コンサルタント。

連載の紹介

谷口恭の「梅田のGPがどうしても伝えたいこと」
患者さんに最も近い立場で医療を行いたい……。それを実現するため医師6年目に資金300万円で開業した谷口氏。「どのような人でも、どのような症状でも受け入れる」をポリシーに過去11年で3万人以上の初診患者を診察した経験を基に、開業医のやりがいや苦労、開業医に求められるミッションを若手医師向けに語ります。

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