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小児へのコロナワクチンに国際コンセンサスなし、どうする?

 「コロナワクチン不安です。打たないといけないのでしょうか」という相談が増え始めたのが今年の春。相談の内容に変化が起こり始めたのは7月中旬頃。前回のコラム(「ポストコロナワクチン症候群」は存在するか)で紹介したように「ワクチン接種後、体調が戻らないんですが……」という相談が少しずつ増え始めた。

 前回のコラムではその“病名”を「ポストコロナワクチン症候群」と名付けた。このような疾患が実在するのかどうか、そして原因が本当にワクチンなのかどうかは別にして(これらが「ノセボ効果」でないかは検証されなければならない)、ワクチン接種後に苦しみ、日常生活に支障を来している人がいて、どうやらその人数は少なくなさそう、といったことは事実だ。

 そして最近、相談内容がまた少し変化してきている。現在急増しているワクチン関連の相談は「(10歳代の)子どもにワクチンを受けさせるべきでしょうか」だ。

 小児の感染がインドネシアや米国で深刻になっていることは過去のコラム(小児で広がるCOVID-19感染、対策は?)で既に述べた。また、米国では11歳以下の子どもにワクチンを受けさせたいと考える保護者が急増していること、カナダの一部の州では11歳に接種が始まったことも述べた。米国では、もともとのスケジュールにおいてこの秋にも5~11歳へのワクチン接種が開始される予定だったが、米国食品医薬品局(FDA)がファイザー社、モデルナ社の両社に対し治験の条件を厳しくしたことで、早くても年末ごろになるだろうと報道されている。

 つまり、米国は慎重な姿勢を維持しつつも、小児(5歳以上)へのワクチン接種に積極的な姿勢を見せているのだ。

 一方、英国では様相が異なる。9月3日、英国ワクチン諮問委員会(The Joint Committee on Vaccination and Immunisation)は、12~15歳の健康な小児へのワクチン承認をしない旨が報道された(BBCの関連サイト)。

 9月10日、英国紙The Guardianは「研究によると、少年ではコロナに感染するよりもワクチンがリスクだとされる(Boys more at risk from Pfizer jab side-effect than Covid, suggests study)」という記事を発表し、物議を醸した。The Guardianが引き合いに出している論文は米国のもので、査読前論文を集めたmedRxivの2021年9月8日号に掲載された「12~17歳における新型コロナのmRNAワクチン接種関連心筋炎~全国データベース分析(SARS-CoV-2 mRNA Vaccination-Associated Myocarditis in Children Ages 12-17: A Stratified National Database Analysis)」だ。

 この研究は「ワクチン副反応報告システム(Vaccine Adverse Event Reporting System,VAERS)を利用し、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のmRNAワクチンを接種した12~17歳の男子を対象とし、2021年1月1日から2021年6月18日までに届けられた報告をレビューしている。「胸痛」「心筋炎」「心膜炎」などのキーワードが含まれる報告を解析し、ワクチン接種を受けた基礎疾患のない12~15歳の男子の場合、心臓の有害事象(Cardiac adverse event, CAE)を発症する割合は、COVID-19による入院リスクの3.7~6.1倍にもなることが分かった。16~17歳でみれば、CAEの割合は2.1~3.5倍となり、高校生よりも中学生の年齢の方がハイリスクであることが分かる。

 査読前の論文集を読む一般人はほとんどいないだろうが、The Guardianは多くの人の目にとまったに違いない。COVID-19で入院するリスクよりもワクチンで心疾患を起こすリスクの方が高いのならばワクチンを控えようと考える人が大勢出てくるだろう。しかも、9月3日にはワクチン諮問委員会は健康な12~15歳へのワクチン接種を勧めないと発表しているのだ。

 ところが、The Guardianの記事が出た3日後の9月13日、英国政府のChief Medical Officersは「12~15歳の全ての小児にSARS-CoV-2のワクチン接種を実施する予定」と発表した。ただし、この発表を報じたReuterによると、 接種は1回のみで、2回目は少なくとも来年の春までは実施しない方針のようだ。

 というわけで、英国の動きをまとめると「10歳代への接種には慎重な姿勢を維持。12歳以上には接種することになったが1回接種のみで、2回目接種の実施は未定」となる。米国は早ければこの冬にも5~11歳へのワクチン接種が開始(しかも、1回のみとしている報道が見当たらないために恐らく2回接種が標準と思われる)されるわけだから、米英間には大きな温度差がある。

 翻って日本をみてみよう。日本では「11歳以下にもワクチン」という声はあまり聞こえてこないが、全体としては「12歳以上は接種しよう」という流れになってきているのではないか。しかも2回接種が標準とされている。

著者プロフィール

たにぐち やすし氏●1991年関西学院大学社会学部卒。商社勤務を経て、2002年大阪市立大学医学部卒。研修医終了後、タイのエイズ施設でのボランティアを経て大阪市立大学医学部総合診療センター所属となり、現在も同大非常勤講師。2007年に大阪・梅田に開業。日本プライマリ・ケア連合学会指導医。労働衛生コンサルタント。

連載の紹介

谷口恭の「梅田のGPがどうしても伝えたいこと」
患者さんに最も近い立場で医療を行いたい……。それを実現するため医師6年目に資金300万円で開業した谷口氏。「どのような人でも、どのような症状でも受け入れる」をポリシーに過去11年で3万人以上の初診患者を診察した経験を基に、開業医のやりがいや苦労、開業医に求められるミッションを若手医師向けに語ります。

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