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小児で広がるCOVID-19感染、対策は?

 春には「コロナワクチンは打ちません」と言っていた患者から、「やっぱり打つことにしました」という言葉を聞く機会が増えてきた。特に、当院をかかりつけにしている医療従事者は、今ではほぼ全員が既に完了している。ある看護学生は担当の先生から何度も「早く打つように」との電話がかかってきて決心したそうだ。

 現在も、毎日何人もの患者から「ワクチンどうしたらいいですか?」という質問を受け、当院未受診の人からもワクチンの是非についてのメール問い合わせが届く。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に限らず、僕はいつも「最終的には自分で決めてください」と伝え「ワクチンは理解してから接種するべきだ」と言い続けている。そして、ワクチンのベネフィットについて説明するときに僕が必ず尋ねるのが「そのワクチンは誰のために打つのですか?」というものだ。例えば、接種を決心した医療従事者は「患者を守るため」と考える者が多い。

 風疹ワクチンについて中年男性から相談されたときには、「あなたが風疹にかかってもたいていは軽症で済みますが、もしも妊娠している女性に感染させてしまったら大変なことになるかもしれません。国が無償でワクチンを打たせてくれるのは、国があなたのことを思っているわけではなくて未来の子どもを守るためなのです」と答えている。

 最初は「ほんまに打たなあかんのですか?」と、できれば打ちたくないと考えている中年男性も、こういう説明をすると「妊婦さんを守るためなら喜んで協力します!」と、がぜん積極的になるから面白い。他人に迷惑をかけたくない、とまず考えるのが日本人の国民性なのだろうか。感染させることが許されないという「罪」の意識から来るのか、あるいは、自分がワクチンを打って他者を守らねばという「献身」や「利他」の精神から来るのかは分からないが、風疹ワクチン接種を決めたこの中年男性のように、自分よりもむしろ他者のために受けるワクチンのことを僕は「利他的ワクチン」と呼んでいる。風疹の他には、健常者のインフルエンザワクチンも利他的ワクチンに相当すると思っている。

 そして、SARS-CoV-2のワクチンも若い世代にとっては利他的ワクチンの一種だった。6月までは僕は若い患者から質問を受けたときは「あなたがコロナに感染してもたいしたことはないでしょう。ですが、もしも高齢者や持病を抱えた人にうつすと大変なことになるかもしれません。そういった人と接することはないかどうか考えてみてください」と答えていた。すると、高齢者と住んでいるという若者や、高齢者と接する仕事をしている人たちはたいてい「接種します」という結論になる。他方、高齢者とは関わらないという人たちからは「今は見合わせます」と言われることも多い。

著者プロフィール

たにぐち やすし氏●1991年関西学院大学社会学部卒。商社勤務を経て、2002年大阪市立大学医学部卒。研修医終了後、タイのエイズ施設でのボランティアを経て大阪市立大学医学部総合診療センター所属となり、現在も同大非常勤講師。2007年に大阪・梅田に開業。日本プライマリ・ケア連合学会指導医。労働衛生コンサルタント。

連載の紹介

谷口恭の「梅田のGPがどうしても伝えたいこと」
患者さんに最も近い立場で医療を行いたい……。それを実現するため医師6年目に資金300万円で開業した谷口氏。「どのような人でも、どのような症状でも受け入れる」をポリシーに過去11年で3万人以上の初診患者を診察した経験を基に、開業医のやりがいや苦労、開業医に求められるミッションを若手医師向けに語ります。

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