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コロナ感染予防にマスクはサージカルの徹底を

 相次ぐ百貨店での新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)集団感染を受け、国立感染症研究所は「百貨店・ショッピングセンター等大型商業施設の事業者、従業員、及び産業保健スタッフの皆さまへの提案(2021年8月12日時点) 」を公表した。

 僕のような単なるGPが、同研究所のような権威ある組織に対し、なんのエビデンスも用意せずに申し入れをすることが非常識なのは承知しているが、この同所の「提案」には、百貨店での集団感染発生に際し僕が最も問題だと思っていることが含まれていないために、この場を借りて述べておきたい。

 7月下旬、大阪梅田にある阪神百貨店で地下の食品売り場を中心にクラスターが発生した。そのすぐ近くにある阪急百貨店でも7月27日以降、従業員34人の感染が判明した。これらに対し、国立感染症研究所は「客が密となる場所においては人の流れや(時間当たりの)入場者数の調整をする。その際、売り場では、例えば混雑時・非混雑時のCO2濃度を参考に換気を工夫する」という提案をしている。

 だが、これでは不十分なのだ。先に「なんのエビデンスも用意せずに」と述べたが、どうしても言っておきたいのは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行以降、僕自身が両百貨店に何十回と足を運んでおり実態を観察しているからだ。というのも、阪神、阪急どちらの百貨店も当院から徒歩10分程度の距離に位置しており、百貨店そのものに用があることはそう多くないのだが、入口の前を通り過ぎることは月に何度もあるのだ。

 両百貨店の入り口を観察していつも驚かされるのが「マスクのチェックがされていない」ということだ。もちろん、マスクをせずに入店する客はおらず(もしいれば入口の係員に制止されるだろう)、全ての客にアルコールによる手指消毒が義務付けられており(これを無視して入店するのは容易ではない)、体温測定もされている。ただ、マスクはどのようなマスクでも通過できるのだ。実際、僕の印象で言えば、入店者の2~3割はポリウレタンマスクや布マスクしかしていない。一度、ネックゲートルでの入店が認められるかどうかを調べようと思い、僕が被験者になって入店を試みると何のとがめもなく入れてしまった……。

著者プロフィール

たにぐち やすし氏●1991年関西学院大学社会学部卒。商社勤務を経て、2002年大阪市立大学医学部卒。研修医終了後、タイのエイズ施設でのボランティアを経て大阪市立大学医学部総合診療センター所属となり、現在も同大非常勤講師。2007年に大阪・梅田に開業。日本プライマリ・ケア連合学会指導医。労働衛生コンサルタント。

連載の紹介

谷口恭の「梅田のGPがどうしても伝えたいこと」
患者さんに最も近い立場で医療を行いたい……。それを実現するため医師6年目に資金300万円で開業した谷口氏。「どのような人でも、どのような症状でも受け入れる」をポリシーに過去11年で3万人以上の初診患者を診察した経験を基に、開業医のやりがいや苦労、開業医に求められるミッションを若手医師向けに語ります。

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