日経メディカルのロゴ画像

難民申請者に「外国人価格」請求の倫理観を問う

 海外、特に東南アジアでは外国人が高い料金を取られることはそう珍しくない。例えば、タイでは美術館や有料の公園などではタイ人の料金と外国人の料金が異なることがしばしばある。だが、そのタイでも「外国人だから」という理由で、医療機関で外国人料金を取られることはない。僕はタイのエイズ患者を支援している関係で、これまでタイ全土の何十という病院/診療所を訪れた経験があるが、どこの施設も外国人料金など設けていない(駐在員や旅行者を含む多くの日本人は初めから外国人用の高価な病院を訪れるが、これは別の話だ)。

 では、日本の観光施設やその他外国人が利用する施設で日本人よりも高い「外国人価格」を設けているところはあるのだろうか。僕の知る限りはない。医療機関を除いては。

 この連載では繰り返し「外国人医療」の問題を取り上げてきた。毎日数名の外国人患者が受診する当院では、たいていは当院だけで診ているが、入院や手術が必要な事例に遭遇したときは受け入れてくれるところを探さねばならず、今も苦労することが多い。英語のホームページをつくっている医療機関でさえ「通訳を連れてこい」とか「患者からの英語での電話は一切お断り」と言われることが少なくないのだ。「電話をするな」と言われてその医療機関にお世話になろうとする患者がどこにいるというのか。

 「外国人の患者、歓迎です」と言ってくれるところもなくはないが、たいていは、交渉しても渋られるのだ。揚げ句の果てに「うちでは(保険点数の)300%いただきますけど、その人が支払えることを(当院に、あるいは僕に)保障してもらえますか?」と言われたことすらある。まだ診察を受けていない時点で医療費がいくらかかるかもわからないのにこんなことを言われても答えようがない。

 それにしても300%は高すぎないだろうか。当院がお願いしているのは医療ツーリズムとは違うのだ。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が流行する前、「インバウンドを対象とした医療ツーリズムに力を入れるべきだ」という意見があった。お金のある外国人を誘致して日本の高いレベルの医療サービスを供給しようという考えだ。僕はこのようなものにはまったく興味がないが、やりたい人はやればいいと思うし、費用はその医療機関で決めて利益を追求してもいいと思う。経済界からは歓迎されるだろう。

 だが、日本で医療を求めている外国人はそういったインバウンドばかりではない。症例を紹介しよう(ただしいつものように詳細にはアレンジを加えている)。

著者プロフィール

たにぐち やすし氏●1991年関西学院大学社会学部卒。商社勤務を経て、2002年大阪市立大学医学部卒。研修医終了後、タイのエイズ施設でのボランティアを経て大阪市立大学医学部総合診療センター所属となり、現在も同大非常勤講師。2007年に大阪・梅田に開業。日本プライマリ・ケア連合学会指導医。労働衛生コンサルタント。

連載の紹介

谷口恭の「梅田のGPがどうしても伝えたいこと」
患者さんに最も近い立場で医療を行いたい……。それを実現するため医師6年目に資金300万円で開業した谷口氏。「どのような人でも、どのような症状でも受け入れる」をポリシーに過去11年で3万人以上の初診患者を診察した経験を基に、開業医のやりがいや苦労、開業医に求められるミッションを若手医師向けに語ります。

この記事を読んでいる人におすすめ