日経メディカルのロゴ画像

コロナ濃厚接触者は誰が何を根拠に決めるのか?

 最近印象に残っている症例を紹介したい。当院には数年前より通院しており、日々、会社業務に多忙な30歳代の女性の経験談だ(ただし、プライバシー確保の観点からいつものようにアレンジを加えている)。

 ある日、「定期薬が切れそうだから」と当院に電話がかかってきた。現在“自粛中”で外出できないと言う。自覚症状は全くないものの、保健所から「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の濃厚接触者」と認定されたとのこと。ところが「この自粛には納得できない」と繰り返し僕に訴える。そこで詳しく話を聞いてみた。

 COVID-19が流行し出した2月以降、この女性は外出、出張はできるだけ控えていると言う。しかしながら、どうしても取引先と対面せざるを得ないケースがあり、約8カ月ぶりにある地方都市へ出張することになった。出張を無事終えた翌日、ある地方都市(出張先の都市ではない)の保健所から電話がかかってきた。「大阪への便に当地(その保健所管轄)の住民が搭乗していて新型コロナウイルス陽性だった。あなたが近くに乗っていたことを大阪府の保健所に通知した。もうすぐ大阪の担当者から連絡があるから検査を受けてほしい」と言われたそうだ。

 女性によれば、陽性者がどの席に座っていたかを保健所は教えてくれなかった。大阪に帰るその便では、少なくとも近くに座っていた乗客は全員がマスクをしており飲食もせず始終無言だったとのこと。その地方都市の保健所が言ったとおり、同日に大阪の保健所から電話があり「濃厚接触者だから検査を受けてほしい。結果にかかわらず2週間は外出を控えてほしい」と言われたそうだ。

 納得できないながらも保健所の指示を無視するわけにはいかない。PCRの結果は陰性だったが、2週間の自粛を強いられた。当然のことながら、2週間の自粛により経済的にそれなりに損害を被ることになったが、保障してもらえるわけではない。女性は僕に繰り返し訴えた。「機内では何度も換気をしているとアナウンスが流れていた。あれば何だったのでしょう」と。

著者プロフィール

たにぐち やすし氏●1991年関西学院大学社会学部卒。商社勤務を経て、2002年大阪市立大学医学部卒。研修医終了後、タイのエイズ施設でのボランティアを経て大阪市立大学医学部総合診療センター所属となり、現在も同大非常勤講師。2007年に大阪・梅田に開業。日本プライマリ・ケア連合学会指導医。労働衛生コンサルタント。

連載の紹介

谷口恭の「梅田のGPがどうしても伝えたいこと」
患者さんに最も近い立場で医療を行いたい……。それを実現するため医師6年目に資金300万円で開業した谷口氏。「どのような人でも、どのような症状でも受け入れる」をポリシーに過去11年で3万人以上の初診患者を診察した経験を基に、開業医のやりがいや苦労、開業医に求められるミッションを若手医師向けに語ります。

この記事を読んでいる人におすすめ