日経メディカルのロゴ画像

choosing wiselyが医師のストレスを減らす

2020/11/11
谷口 恭(太融寺町谷口医院)

 前回述べた「不必要なアレルギー検査」のように、医療者側からみて無駄な検査を患者から要求されることは少なくない。臨床的に診断は片頭痛で間違いないのにMRIを要求する患者、単なる急性腰痛でレントゲンを撮ってくれという患者、軽度の関節痛でリウマチの血液検査をしてほしいと訴える患者などに加え、過去のコラムで述べたように当院には不必要と思われる性感染症の検査を繰り返し求めてくる者もいる。

 検査だけではない。単なるかぜで抗菌薬をしつこく求める患者、「一番ゆるい睡眠薬だから」と言ってゾルピデムを要求する患者、「前の病院では半年間当然のように処方されていた」と言いロキソプロフェン1日3錠の処方をせがむ患者もいる。また、「かぜを早く治すために」「疲れをとるために」などという理由で点滴を欲する者も少なくない。

 「検査や薬は最小限」というセリフを言い続けて14年になる。つまり、この言葉を口にせねばならない機会が当院を開業してからずっと続いているのだ。もっとも、開業前に大学病院の総合診療で外来を担当させてもらっていたときも、過剰な検査を要求する患者は少なくなかった。だが、それが大学病院の“権威”なのかどうかは分からないが、総合診療科の外来では「お気持ちは分かりますが、医学的にみてご希望の検査は不要です」と言えばそれ以上しつこく求められることはさほど多くなかった。もしかすると、「大学病院の先生がそう言うのなら」という気持ちが患者側にあったのかもしれない。診察しているのは研修医に毛の生えた程度の若輩者だったのだが……。

 一方、診療所で同じことを言うと「たかが町医者が偉そうなこと言うな。あんたはこっちが希望する検査をして薬を出せばそれでええんや」という気持ちがあるからなのか、「その検査(や薬・点滴)は不要です」と言ってもなかなか引き下がらない患者が少なくない。

 そしてこの応対にはかなりのエネルギーを消耗する。いろいろと言葉を変えて、「なぜその検査(や薬)が要らないのか」について説明するのだが、一筋縄にはいかない。たまりかねて「医療をサービス業と勘違いされてませんか?」とか「医療機関は営利団体ではありません!」などと言ってしまうと怒りに火をつけることになる。こうなると患者医師関係は破綻し、その患者は二度と来なくなる。ややこしい患者と手を切れて良かった、と思うわけにはいかない。このような事態は医師の「敗北」を意味するのだ。

 何も患者にいじわるをしたくて希望する検査や薬を拒んでいるわけではない。無駄な医療行為をなくし出費を控えてもらいたい、そして医療機関を受診しなくていいようになってほしいからこそ、希望する医療行為が不要であることを伝えているのだ。けれども、症例によってはなかなかうまくいかない。

著者プロフィール

たにぐち やすし氏●1991年関西学院大学社会学部卒。商社勤務を経て、2002年大阪市立大学医学部卒。研修医終了後、タイのエイズ施設でのボランティアを経て大阪市立大学医学部総合診療センター所属となり、現在も同大非常勤講師。2007年に大阪・梅田に開業。日本プライマリ・ケア連合学会指導医。労働衛生コンサルタント。

連載の紹介

谷口恭の「梅田のGPがどうしても伝えたいこと」
患者さんに最も近い立場で医療を行いたい……。それを実現するため医師6年目に資金300万円で開業した谷口氏。「どのような人でも、どのような症状でも受け入れる」をポリシーに過去11年で3万人以上の初診患者を診察した経験を基に、開業医のやりがいや苦労、開業医に求められるミッションを若手医師向けに語ります。

この記事を読んでいる人におすすめ