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なぜ、そんなアレルギー検査を勧めるのか?

2020/11/06
谷口 恭(太融寺町谷口医院)

 過去にも述べたように、当院は「クレームの絶えないクリニック」であり、その内訳として「希望する検査をしてくれない」と「希望する薬(や点滴)をしてもらえない」が多くを占める。過去のコラム「HIV抗体検査、苦労しつつもやめない僕の胸の内」では、HIVを含む性感染症の検査希望者からの苦情が多いことを紹介した。今回はアレルギー検査希望者からの話。

 説明の仕方に問題があることは認めるが、希望している検査が不要であることを伝えると気分を害する患者がいる。もちろん「検査がいらないことを聞いてほっとしました」と納得してもらえることも多いのだが、その逆に「お金払うの、あたしですよね……」と引き下がらない者もいる。こういう患者を説得できるのも良医の条件だろう。経験を重ねても怒り出す患者が今もいるのだから僕は研修医の頃からちっとも上達していない。

 症例を紹介しよう。「じんましん。アレルギー検査希望」と問診表に書いてある30歳代の初診の女性。

 まず確認すべきは、患者が言う「じんましん」が本当に蕁麻疹かどうかだ。患者はじんましんと言っても、実際には湿疹や他の皮膚疾患であることが珍しくない。ほとんどのケースで「真の蕁麻疹」か否かについては簡単な問診ですぐに分かる。「出たり消えたりしますか」と聞いて、それが「はい」なら蕁麻疹でまず間違いない。
 
 この女性の場合、数か月前から毎日入浴後に出現し、何もしなくても2~3時間で引いていくという。この時点で診断は「非アレルギー性の慢性蕁麻疹」でほぼ間違いない。アレルギー検査は当然不要だ。蕁麻疹の中でアレルギー性はわずかなこと、そもそも数カ月前から毎日出ている事実からアレルギーは否定できることなどを説明しても、女性は引き下がらない。

 そこで、何かアレルゲンとして思い当たるものがあるのかを尋ねてみると「それが分からないから検査してほしいんです!」と既に気分を害し強い口調になっている。このままでは堂々めぐりになる。時間も限られている。「そもそも診察で必要と認められた場合にしか検査はできないのが保険診療のルールです」と正論を主張すると、火に油を注ぐ結果となった。「もういいです!」と怒って帰ってしまった。

 患者を怒らせたわけだからもちろん反省せねばならない。次に同じような患者が受診すれば検査不要であることをうまく説得できるだろうか。残念ながら僕には自信がない。いったん「どうしても検査!」と信じ込んでしまった人に対して、その“信念”を覆すのは容易ではない。以前のコラムで述べた「性感染症の検査を要求する人」も同様であり、最近では「どうしても新型コロナの検査をしてほしいんです!」と診察室で引き下がらない人にも言えることだ。

著者プロフィール

たにぐち やすし氏●1991年関西学院大学社会学部卒。商社勤務を経て、2002年大阪市立大学医学部卒。研修医終了後、タイのエイズ施設でのボランティアを経て大阪市立大学医学部総合診療センター所属となり、現在も同大非常勤講師。2007年に大阪・梅田に開業。日本プライマリ・ケア連合学会指導医。労働衛生コンサルタント。

連載の紹介

谷口恭の「梅田のGPがどうしても伝えたいこと」
患者さんに最も近い立場で医療を行いたい……。それを実現するため医師6年目に資金300万円で開業した谷口氏。「どのような人でも、どのような症状でも受け入れる」をポリシーに過去11年で3万人以上の初診患者を診察した経験を基に、開業医のやりがいや苦労、開業医に求められるミッションを若手医師向けに語ります。

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