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「伝統の回し飲みで感染拡大」に思うこと

2020/10/07
谷口 恭(太融寺町谷口医院)

 いわゆる「三密」を避け、みんながマスクを着用し、接触感染にも注意していれば、理論的には新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は(ほぼ)感染しないはずだ。にもかかわらず、世界各地で感染が収束せず、地域によっては増加の一途をたどっているのはこれらが守られていないからに他ならない。

 なぜ「守られない」のか。その理由は3つに分類できると思う。1つ目は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)をただのかぜと考え、あるいは自分は絶対にかからないと信じ、「初めから守る気持ちがない」というケース。2つ目は「守りたくても物理的に守れない」というケースだ。例えば、サンパウロのファベーラと呼ばれる貧困地区、マニラのスモーキーマウンテン近くのスラム街、バラナシの路地裏などに住んでいる人にソーシャル・ディスタンシングを取れ、といっても初めから無理な話だ。

 そして「守られない」3つ目の理由が「守るべきなのは分かるがどうしても譲れない事情がある」というケースだ。

 2020年9月27日、全国紙・地方紙含めて一斉に、鹿児島県与論島でのSARS-CoV-2のクラスターが、ある「伝統行事」が原因であることを報じた。例えば、沖縄タイムスは「伝統の回し飲み 感染拡大 鹿児島の与論島 クラスターの一因に」というタイトルの記事を掲載した。

 実は、7月下旬に与論島で感染者が増えているという報道を見たとき、真っ先に僕の脳裏をよぎったのが、その「伝統行事」だった。極めて個人的なことではあるが、これを説明するのに1980年代後半の僕の経験を紹介しておきたい。

著者プロフィール

たにぐち やすし氏●1991年関西学院大学社会学部卒。商社勤務を経て、2002年大阪市立大学医学部卒。研修医終了後、タイのエイズ施設でのボランティアを経て大阪市立大学医学部総合診療センター所属となり、現在も同大非常勤講師。2007年に大阪・梅田に開業。日本プライマリ・ケア連合学会指導医。労働衛生コンサルタント。

連載の紹介

谷口恭の「梅田のGPがどうしても伝えたいこと」
患者さんに最も近い立場で医療を行いたい……。それを実現するため医師6年目に資金300万円で開業した谷口氏。「どのような人でも、どのような症状でも受け入れる」をポリシーに過去11年で3万人以上の初診患者を診察した経験を基に、開業医のやりがいや苦労、開業医に求められるミッションを若手医師向けに語ります。

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