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臨床現場で見聞する「コロナ差別」の現実

 最近、ある大病院で働く事務員から興味深い話を聞いた。彼の職場では事あるごとに病院長が「当院の職員が新型コロナに感染するようなことがあってはならない」と繰り返しているそうだ。最初のうちは、「各自が健康管理をしっかりと行い不要不急の外出を控え、飲み会を自粛するように」という組織のリーダーとして当然のことを話していると考えられていたようだ。

 ところが、病院長が繰り返すその言葉の意味が次第に変わってきているとその職員は言う。「『感染するな』というのは、『感染したかもしれないなら黙って休め』が病院長のホンネらしいよ」という“噂”が既に職員の間で広がっているそうだ。

 大規模病院の病院長がそのようなことを考えているとは到底思えないが、結果として「感染したかもしれない症状が出てもそれを申し出ることはできない」雰囲気がその病院にまん延しているのだろう。事務員も含めて医療機関で働くのであれば、患者の安全(それ以前に自分の安全も)を考えなければならないのだから、少しでも感染した可能性があれば直ちにそれを申し出て検査を受ける義務があるのは自明だ。

 この職員が知る限り、この病院ではいまだに「感染したかもしれない」と申し出た職員はいないそうだ。しかし、その病院の職員数百名が、数カ月間にわたり1人も発熱していないなんてことがあり得るだろうか。疑いたくはないが、いまだに申し出た者が本当にいないのであれば、発熱が生じてもそれを黙っている職員がいるということではないのか。

著者プロフィール

たにぐち やすし氏●1991年関西学院大学社会学部卒。商社勤務を経て、2002年大阪市立大学医学部卒。研修医終了後、タイのエイズ施設でのボランティアを経て大阪市立大学医学部総合診療センター所属となり、現在も同大非常勤講師。2007年に大阪・梅田に開業。日本プライマリ・ケア連合学会指導医。労働衛生コンサルタント。

連載の紹介

谷口恭の「梅田のGPがどうしても伝えたいこと」
患者さんに最も近い立場で医療を行いたい……。それを実現するため医師6年目に資金300万円で開業した谷口氏。「どのような人でも、どのような症状でも受け入れる」をポリシーに過去11年で3万人以上の初診患者を診察した経験を基に、開業医のやりがいや苦労、開業医に求められるミッションを若手医師向けに語ります。

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