日経メディカルのロゴ画像

新型コロナ、唾液PCRや抗原検査は登場したが…

2020/06/22
谷口 恭(太融寺町谷口医院)

 本連載で「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の診療ではかかりつけ医がイニシアチブをとるべきだ」と一貫して主張してきた(関連記事:新型コロナ、これからはかかりつけ医の出番新型コロナ、検査はかかりつけ医主導にすべきなど)。保健所の職員の方々が過酷な労働条件の中、電話口で罵声を浴びせられながらも健闘されていることには感謝申し上げるが、行政が掲げる政策がはじめから「かかりつけ医主導」のものであればこんなに混乱は生じなかったはずだと今も思っている。

 厚生労働省も大阪府も当初「かぜ症状が4日続けば全員がセンターに電話」という方針を打ち出した。後に4日間の自宅待機中に容態が悪化して亡くなるケースが報道され、厚生労働大臣が「4日待たなければ検査できないわけではない」と釈明することになった。大臣がそのつもりであったとしても国民の多くは「4日待たなければ電話できない」と思っていたし、今も思っている人が多い。一般の国民だけではない。つい先日も当院で高熱、倦怠感でCOVID-19を疑う患者を診察し保健所に相談すると「レントゲンを撮っていないならPCRはできない。どうしてもというなら数日間は待ってもらう」と言われた。

 4月に比べるとPCRの「敷居」が下がっているのは事実だが、それでも保健所に依頼するときにはかなり気を使う。症状を大袈裟に伝えるわけにはいかないので、リンパ球数やDダイマーの値、COVID-19を疑う根拠となる具体的な症状、東京出張のエピソードなど、幾つもの“武器”を用意した上で電話しなければならない。地域によってはここまでしなくても比較的速やかに引き受けてくれるところもあるが、依然ハードルが高い地区(や担当者?)もある。

 保健所(行政)主体のPCRは実施に至ったとしてもまだ問題がある。まず、上述したように“武器”を用意しないといけないので、初診時に採血やレントゲン撮影を行わねばならない。もっとも、極めて倦怠感が強い場合や酸素飽和度が既に低下しているような重症の場合は電話相談だけで検査を受けてくれるだろうが(というより入院を検討すべきだが)、そこまでの重症例はクリニックにはまず来ない。重症でないCOVID-19疑い例の場合は“武器”確保のための検査をせねばならないのが現状だ(実際、保健所に電話すると細かく検査値を聞かれることがある)。

 運よくPCRが認められたとしよう。その後の展開は、まず保健所が患者に電話をし、検査をする病院名を伝えることになる。指定された日時(たいていはその翌日か翌々日)にその病院に行き、さらにそれから1~2日後に結果が患者本人に電話で知らされる。ちなみに、結果が陰性の場合は保健所からクリニックに連絡はこない。気を使って電話をくれる患者もいるが、たいていはこちらから「PCRの結果どうでしたか?」と患者に電話をして尋ねることになる。

 以上が一連の流れだ。PCRの結果が出る日数は初診時から数えると早くて4日、長ければ1週間程度かかってしまう。この間に様態が悪化する可能性もあるし、二次感染のリスクも増えるだろう。最短で4日はどう考えても長すぎる。これを短くする方法はないのだろうか。

著者プロフィール

たにぐち やすし氏●1991年関西学院大学社会学部卒。商社勤務を経て、2002年大阪市立大学医学部卒。研修医終了後、タイのエイズ施設でのボランティアを経て大阪市立大学医学部総合診療センター所属となり、現在も同大非常勤講師。2007年に大阪・梅田に開業。日本プライマリ・ケア連合学会指導医。労働衛生コンサルタント。

連載の紹介

谷口恭の「梅田のGPがどうしても伝えたいこと」
患者さんに最も近い立場で医療を行いたい……。それを実現するため医師6年目に資金300万円で開業した谷口氏。「どのような人でも、どのような症状でも受け入れる」をポリシーに過去11年で3万人以上の初診患者を診察した経験を基に、開業医のやりがいや苦労、開業医に求められるミッションを若手医師向けに語ります。

この記事を読んでいる人におすすめ