日経メディカルのロゴ画像

「新型コロナの抗体陰性が仕事に必要なんです!」に対応して思うこと

2020/06/09
谷口 恭(太融寺町谷口医院)

写真1 ニチレイバイオサイエンスのSARS-CoV-2抗体検査(同社ウェブサイトより)

 過去のコラム「現状の新型コロナ抗体検査は社会混乱招くだけ」で述べたように、現在市場に出回っている新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の抗体検査は感度も特異度も十分とは言えず(関連記事:抗体定性検査、陽性者の9割が定量検査で陰性に)、臨床診断に使うべきでない、というのが僕の考えだ。「疫学調査に用いるのはかまわないが、個人の利益にはならない」と言い続け、抗体検査を希望する患者の依頼を断ってきた。

 だが、そういう訳にもいかなくなり、ついに太融寺町谷口医院(以下、谷口医院)でも抗体検査を実施することになった。その理由は「職場などへ提出しなければならない」という声があまりにも多いからで、中には「抗体検査の結果を提出しないと仕事がもらえない」という人もいた。フリーランスでメディア関係の仕事をしているらしい。

 感染症の陰性証明がいかに馬鹿げているかは今さら論じるまでもなく、特に「インフルエンザの陰性証明を学校から求められている」と言われて辟易とした経験はほとんどの医療者にあるのではないか。簡易キットで陰性証明はできないことを説明し、担任ではなく学校医に相談するよう助言することもあれば、どうしても必要と言うならその担任に谷口医院に電話してもらってくださいとつっぱねたこともある。ちなみに、実際に学校から電話がかかってきたことは一度もない。

 COVID-19についても抗体検査の陰性証明など何の役にも立たないわけだが、さすがに「提出しないと仕事がもらえない」と言われると、診察室で正論を振りかざしても意味がないことに気付かされる。そこで「臨床診断には使えず現在存在する抗体検査は疫学調査用」ということを納得してもらい、それでも希望するという人にのみ検査をしている。ちなみに抗体検査(IC法)は、ニチレイバイオサイエンスの「STANDARD Q COVID-19 IgM/IgG DuoTest」(IgM抗体、IgG抗体の迅速検査、写真1)を導入しており、自費診療で5500円(税込み。ただし診察代が別途必要)。

 実際にやってみた結果は……。検査希望者の背景を合わせて紹介しよう(なお、いつものようにプライバシー確保の観点から内容にはアレンジを加えている)。

著者プロフィール

たにぐち やすし氏●1991年関西学院大学社会学部卒。商社勤務を経て、2002年大阪市立大学医学部卒。研修医終了後、タイのエイズ施設でのボランティアを経て大阪市立大学医学部総合診療センター所属となり、現在も同大非常勤講師。2007年に大阪・梅田に開業。日本プライマリ・ケア連合学会指導医。労働衛生コンサルタント。

連載の紹介

谷口恭の「梅田のGPがどうしても伝えたいこと」
患者さんに最も近い立場で医療を行いたい……。それを実現するため医師6年目に資金300万円で開業した谷口氏。「どのような人でも、どのような症状でも受け入れる」をポリシーに過去11年で3万人以上の初診患者を診察した経験を基に、開業医のやりがいや苦労、開業医に求められるミッションを若手医師向けに語ります。

この記事を読んでいる人におすすめ