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長期的視野で「ポストコロナ症候群」に備えよ!

2020/05/08
谷口 恭(太融寺町谷口医院)

 最近はメールで相談してくる患者(一度も受診したことのない人も含めて)の7割くらいは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連だ。興味深いことに、2、3、4月と時間が経つにつれ相談の内容が変わってきている。2~3月の前半までは「かぜ症状が出たが新型コロナではないか」というものが多かったのに対し、3月中旬からは「味覚(あるいは嗅覚)がおかしい。コロナでは?」というものが増えた。また、(ACE阻害薬やARBに関する報道を見て)「服用している血圧の薬は大丈夫か」という問い合わせも増加した。4月になると、「皮膚症状が出たがコロナか?」「下痢が始まった。コロナが怖い」というものも加わった。

 見逃せないのが、恐らく臨床経過からCOVID-19に感染したと思われる患者(保健所にはPCRの適応がないと断られたが臨床症状から疑われる患者)から「熱や咳はもうないけれど、疲れがとれない」と言われることだ。明らかに不定愁訴というものもあるが、中には「その倦怠感は現在もCOVID-19に感染しているかもしれない」あるいは「(経過が2カ月以上にわたるため)ウイルスが消失した後に何らかの後遺症が残っているのかもしれない」という症例もある。

 今後、効果的な治療が開発されなければ、これからこういうケースが増えるのではないかという私見が今回の内容なのだが、まずは僕がCOVID-19を詳しく尋ねてくる患者に説明していることを紹介したい。

 COVID-19は単なる肺炎でなく全身性疾患である、そして我々医療者は(もちろん自分自身も含めて)当初はこの感染症を誤解、そして過小評価していたということを最近は話すようにしている。その患者の理解度を確認しながら「ACE2受容体」「血管内皮細胞炎」「血栓」「サイトカインストーム」というキーワードを用いることもある。

 なぜ従来はかぜを引き起こす程度だったはずのウイルスが全身に症状をもたらすのか。その説明として、まず肺に侵入したウイルスはACE2受容体をターゲットとしてヒトの細胞内に侵入する。次いで細胞内で増殖したウイルスは血管内へと進行する。ACE2受容体は血管内皮細胞にも心臓や腎臓、腸管といった他臓器にも存在する。ウイルスが臓器を直接障害する可能性もあるし、血管内皮細胞炎が起こった結果、血栓ができたりサイトカインストームと呼ばれる免疫系の暴走が起こったりすることもある。だから、COVID-19は全身のあらゆる臓器に障害を起こすことが考えられる、という説明だ。最近は血栓の説明をした上で、採血にDダイマーを加えることを伝えている。

 患者に不安を与えるのは「罪」ではあるが、かといって楽観視させるわけにもいかない。3月以降、世界的に脳血管疾患や虚血性疾患が増えていることを説明し、これらの疾患がCOVID-19が原因の可能性があることを伝えている。その上で、COVID-19に感染すると誰にでもこういったことが起こるわけではなく、これら疾患の他のリスクがある場合が危ない、という話をした上で「だから禁煙を直ちにしましょう」とこちらの都合のいいように展開していくこともある。

著者プロフィール

たにぐち やすし氏●1991年関西学院大学社会学部卒。商社勤務を経て、2002年大阪市立大学医学部卒。研修医終了後、タイのエイズ施設でのボランティアを経て大阪市立大学医学部総合診療センター所属となり、現在も同大非常勤講師。2007年に大阪・梅田に開業。日本プライマリ・ケア連合学会指導医。労働衛生コンサルタント。

連載の紹介

谷口恭の「梅田のGPがどうしても伝えたいこと」
患者さんに最も近い立場で医療を行いたい……。それを実現するため医師6年目に資金300万円で開業した谷口氏。「どのような人でも、どのような症状でも受け入れる」をポリシーに過去11年で3万人以上の初診患者を診察した経験を基に、開業医のやりがいや苦労、開業医に求められるミッションを若手医師向けに語ります。

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