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大阪発、軽症の”新型コロナ疑い例”への対応法

2020/03/12
谷口 恭(太融寺町谷口医院)

 前回のコラム(関連記事:新型コロナ、これからはかかりつけ医の出番)で紹介したように、太融寺町谷口医院(以下、谷口医院)では、2月25日に首相官邸が発表した「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」に従ってCOVID-19の対応をしている。この方針は「今後感染が拡大したとき」を想定したものであり、現時点ではその「今後」にはなっていないそうなので、先走った対応をしていることになる。だが、当局に確認したところ「現在でも谷口医院の対応が望ましい」とのことであった。

 我々GPから見たときのこの「基本方針」の最大のポイントは「風邪症状が軽度である場合は、自宅での安静・療養を原則とし、状態が変化した場合に、相談センター又はかかりつけ医に相談した上で、受診する」というところだ。現在谷口医院では当院をかかりつけとしている患者に対しては、「状態が変化した場合」または「初めから軽度でない症状が出現した場合」には帰国者センターでなく当院に相談してもらっている(この「方針」が発表されるまでは、「先に帰国者センターに問い合わせてください」と言わねばならなかった)。

 さて、何人もの識者が既に指摘しているように、COVID-19は検査をしていないから「陽性者」が少ないのであって実際には発表されている人数の数十倍は感染者がいると思われる。当院でCOVID-19を疑った2つの症例を紹介したい。

【症例1】30歳代女性
 関節痛が生じ、翌日に38℃の発熱、その翌日は40℃を超えた。咽頭痛はほとんどなく咳が出てきた。その翌日に当院受診となったが、受診時には解熱傾向にあり全身状態は比較的良好であった。この女性は11年前から当院をかかりつけ医にしていて感冒症状で受診することも多いが、このような症状は初めてであった。インフルエンザ迅速検査陰性。咽頭・扁桃の発赤も軽度で細菌性咽頭炎は考えにくい。再び発熱する可能性もあると考え、採血を実施したところ、リンパ球の相対的低下とC反応性蛋白(以下CRP)高値(16.23mg/dL)を認めた。症状が持続すれば帰国者センターに相談することを考えたが、翌朝電話をすると「全く症状がなくなった」とのことだった。

【症例2】30歳代男性
 数日前から倦怠感を自覚し高熱と咳が生じたため当院受診。13年前から当院をかかりつけ医にしている患者で感冒症状での受診も多いが、このような症状は初めて。インフルエンザ陰性。胸部X線で肺炎を示唆する所見認めず。採血ではリンパ球正常(1961/uL)、CRP低値(0.81mg/dL)とほぼ異常を認めず経過観察とした。4日後に増悪したとの連絡があり診察時間の最後に受診してもらった。このときの採血ではリンパ球690/uLと大きく減少(CRPは依然低値)。本症例は(厚労省の基準の)「4日以上の発熱・咳嗽」を満たしているため帰国者センターに相談した。ところがセンターの回答は「現在大阪では、感染確定者との濃厚接触やライブハウス訪問といった条件が満たされなければ検査できない」とのことだった。

 ここ10日ほどで谷口医院には症例1、2のような患者が相次いで来院している。病原体や抗体が検出されたわけではないため「確定診断」はできないが、臨床的にCOVID-19の可能性を考えている。「谷口式COVID-19臨床的診断基準」は以下のようになる。


著者プロフィール

たにぐち やすし氏●1991年関西学院大学社会学部卒。商社勤務を経て、2002年大阪市立大学医学部卒。研修医終了後、タイのエイズ施設でのボランティアを経て大阪市立大学医学部総合診療センター所属となり、現在も同大非常勤講師。2007年に大阪・梅田に開業。日本プライマリ・ケア連合学会指導医。労働衛生コンサルタント。

連載の紹介

谷口恭の「梅田のGPがどうしても伝えたいこと」
患者さんに最も近い立場で医療を行いたい……。それを実現するため医師6年目に資金300万円で開業した谷口氏。「どのような人でも、どのような症状でも受け入れる」をポリシーに過去11年で3万人以上の初診患者を診察した経験を基に、開業医のやりがいや苦労、開業医に求められるミッションを若手医師向けに語ります。

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