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薬剤師への切なるお願い~その2、抗菌薬編~

2020/02/21
谷口 恭(太融寺町谷口医院)

 薬剤師に言いたいことがたくさんある。

 今回はその2回目でテーマは「抗菌薬」。前回(関連記事:薬剤師への切なるお願い~かぜ薬編~)述べたかぜ薬や咳止めはOTC薬であるから、薬の特徴や注意点を説明しどの薬を選択するかは薬剤師(と顧客)が決めるのに対し、抗菌薬は医師が処方し、薬剤師は「調剤」を担当することになる。「調剤」は広義にはその薬の説明も含まれるという考えに異論はないだろう。

 抗菌薬不適切処方の問題になると、我々医師はとかく「患者が求めるから」というのを言い訳にする。実際、国民の多くが「単なるかぜ、つまりウイルス性の感冒に抗菌薬が効くと思っている」ことを示す調査もある。

 僕自身は、患者に身近な医師が抗菌薬の適正使用をし、患者にも抗菌薬の適正使用の必要性を説明すれば、患者は理解してくれると思っている。例えば、太融寺町谷口医院(以下谷口医院)には、抗菌薬を処方された日数飲まないことで、耐性菌が生じるのではととても心配してくれる患者が少なくない。最近では「グラム染色の像を見に来た」と言う患者もいるほどだ。なお、余談ではあるが、谷口医院の患者は「コーセーブッシツ」とは言わず「抗菌薬」という言葉を使うことが多い。

 副作用についても、医師がきちんと説明すべきと考えている。確かに、実際の臨床現場で全て説明することはできないが、谷口医院では「かぜを引いたからコーセーブッシツをください」と訴える患者には医院のウェブサイトで紹介しているクラビットの添付文書にある副作用の一部を示して「これだけのリスクを背負うことになりますよ」と説明している。クラビットを選んでいるのは「前の病院ではかぜにはいつもクラビットを出してもらってました」と言われることが多いからだ。

 一方、抗菌薬が必要で「副作用が気になる」という患者にも同じページを見せて「これだけのリスクを背負ってでも必要なのです」と説明している。

 調剤に責任を負う多くの薬剤師も医師同様に、抗菌薬の適正使用に努力していると思う。ただ、何年か前のプライマリ・ケア関連の学会の発表に疑問を感じた。それは、たしかテーマは「ポリファーマシー」だったと記憶している。薬局の取り組みとして、患者から余った薬を持って来てもらっているという内容だった。その取り組み自体には賛成であるが、問題はその発表の中で「抗菌薬を持ってくる患者が多い」という発言があったことだ。

 抗菌薬のルールの1つとして、一旦処方された抗菌薬はよほどの大きな副作用が出ない限りは、症状が消失しても最後まで飲み切らなければならない、というものがある(もっとも、これにはエビデンスがない。例えば何らかの細菌感染に対して抗菌薬を5日分処方したとして、本当に4日ではダメだったのか、ということは分からない。抗菌薬の使用期間については多分に医師の経験による。つまりevidence-based treatmentではなくempiric treatmentである)。

 この薬局では「処方された抗菌薬は最後まで飲み切らねばならない」ということを患者に説明していないのだろうか。その発表者の発言の仕方からは、抗菌薬をきちんと飲んでもらえなかったことに対する反省のようなものを感じられなかった。本来なら、抗菌薬を「余った薬」として患者が持って来たならば、そのときに抗菌薬は中断してはいけないことを理解してもらえるよう努力すべきではないのか。

著者プロフィール

たにぐち やすし氏●1991年関西学院大学社会学部卒。商社勤務を経て、2002年大阪市立大学医学部卒。研修医終了後、タイのエイズ施設でのボランティアを経て大阪市立大学医学部総合診療センター所属となり、現在も同大非常勤講師。2007年に大阪・梅田に開業。日本プライマリ・ケア連合学会指導医。労働衛生コンサルタント。

連載の紹介

谷口恭の「梅田のGPがどうしても伝えたいこと」
患者さんに最も近い立場で医療を行いたい……。それを実現するため医師6年目に資金300万円で開業した谷口氏。「どのような人でも、どのような症状でも受け入れる」をポリシーに過去11年で3万人以上の初診患者を診察した経験を基に、開業医のやりがいや苦労、開業医に求められるミッションを若手医師向けに語ります。

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