日経メディカルのロゴ画像

外国人医療には英語より「やさしい日本語」?

2020/01/10
谷口 恭(太融寺町谷口医院)

 この連載を始めるきっかけとなったのは僕が代表となって立ち上げた「関西の外国人医療を考える会」である。「門前払いされた」「電話を切られた」などと言って不本意なドクターショッピングを繰り返している外国人の話を聞き、また外国人患者を紹介しようと思ってもかなり多くの医療機関で断られてきた経験から、「もう黙っていられない!」と考えたのだ。そして、そのことを大勢の医療者に伝えたいと思い、日経メディカルに「1本記事を書かせてもらえないか」と相談したところ、「1回だけでなく連載を持ちませんか」とのお話をいただきこの連載に至ったという次第である。

 日々の診療を通して、同業の医療者や医療制度に疑問を感じ「どうしても言いたいこと」は外国人医療以外にもたくさんある。本連載のタイトルに「どうしても言いたいこと」という言葉を入れてもらったのはそういう思いからである。

 というわけで、本連載で「どうしても言いたいこと」はまだまだ山ほどあるのだが、やはりときどきは「外国人医療」に立ち返ってみたい。訪日外国人が増加したことで医療体制が改善したのかというと、私見を述べればほとんど進展がない。いろいろな立場の人がいろいろな意見を述べているが、同意できないものもある。特に「自施設では診ない」と初めから決めつけている医療機関には違和感を覚える。

 僕が一貫して言い続けているのは「英語以外を母国語とする外国人の多くも、ある程度は英語を理解する。よって、医師のみならず看護師も受付も原則として英語で対応すべき。そして英語を使おうとする患者は断ってはいけない」というものだ。この基本方針を変更するつもりはないのだが、最近気になっている外国人とのコミュニケーションツールがある。

 それは「やさしい日本語」だ。初めてこの「やさしい日本語」という言葉を聞いた瞬間は、「そんなこと言われなくても分かっている」と感じたし、実際、僕には”やさしい日本語”を使っている自信も少しはあった。医学生の頃から、患者に説明する先輩医師を見ていて「あ~、その言葉は難しすぎますよ。僕ならこういうふうに表現するのに……」と心の中で叫ぶことが何度もあったからだ。

 日本に在住していて英語が母国語でない外国人の患者が一生懸命に日本語を話そうとすることがあるが、僕はそういう患者にもまず「日本語と英語、どちらがいいですか?」と最初に尋ねることにしている。このときに英語を選択する患者も多い。彼(女)らの中には(多くの日本人と同じように)英語のリスニングとスピーキングは苦手だが読み書きならなんとかなる、と考えている者も少なくなく、こういう場合はパソコンを使って筆談するとうまくいく。英語でなく日本語を選択した場合、それが中国人であれば漢字を使った筆談をすれば、意外にうまくコミュニケーションが取れることも多い。

 問題は、英語が全くできず日本語も何を言っているのか分からず、そして中国人のように漢字も理解してもらえない、というケースである。症例を紹介しよう。

著者プロフィール

たにぐち やすし氏●1991年関西学院大学社会学部卒。商社勤務を経て、2002年大阪市立大学医学部卒。研修医終了後、タイのエイズ施設でのボランティアを経て大阪市立大学医学部総合診療センター所属となり、現在も同大非常勤講師。2007年に大阪・梅田に開業。日本プライマリ・ケア連合学会指導医。労働衛生コンサルタント。

連載の紹介

谷口恭の「梅田のGPがどうしても伝えたいこと」
患者さんに最も近い立場で医療を行いたい……。それを実現するため医師6年目に資金300万円で開業した谷口氏。「どのような人でも、どのような症状でも受け入れる」をポリシーに過去11年で3万人以上の初診患者を診察した経験を基に、開業医のやりがいや苦労、開業医に求められるミッションを若手医師向けに語ります。

この記事を読んでいる人におすすめ