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総合診療のキャリアパスをどうつくる?

2019/06/21
谷口 恭(太融寺町谷口医院)

 総合診療を行いたいと考えている医学生や初期研修医の多くは、どのようなキャリアパスを描いたらいいのか悩んでいるのではないだろうか。

 まずは、僕の総合診療に対する意見をまとめてみたい。そもそも、昔からプライマリ・ケアや家庭医療、総合診療など似たような言葉を様々な立場の人が様々な場面で使うものだから、医療者の間でさえも総合診療は分かりにくいものだった。

 2009年に3つの学会が統一され「日本プライマリ・ケア連合学会」が誕生した。しかし、総合診療というものに対し、明確な共通認識ができたわけではなかった。総合診療や家庭医療、プライマリ・ケアは全て異なるものだ、と依然主張する医療者もいるし、学会名は「プライマリ・ケア」なのに、最近では「総合診療」という言葉の方が普及してきているので余計にややこしい。

 例えば、僕のように同じ患者に対して一度の診察で、咽頭スワブのグラム染色を行い、勤務先での健診結果の説明をし、腹部エコーや子宮頸部の細胞診を行う家庭医療も「総合診療」なら、複数の医療機関で診断がつかなかった不明熱の患者を入院させて精査を行う大学病院の総合診療科もまた「総合診療」であるわけだから、これらをひとまとめにするのは極めて困難だ。

 2018年度から始まった新専門医制度では総合診療医が「19番目の専門医」とされたが、総合診療の専攻医は2018年度と2019年度ともに180人前後らしい。この少なさは、やはり、専門医としての「総合診療医」の分かりにくさが影響しているように思う。

 総合診療が分かりにくい理由の1つは、そもそもの「前提」が曖昧だからである。よく言われるように海外(例えば欧州)のGP(general practitioner)は(臓器別の)「専門医」ではない。GPはあらゆる症状や悩みに対応する最初の医師であり、必要があれば専門医へ紹介するゲートキーパーなのだ。それを日本では「19番目の専門医」にしようとするからややこしくなる。これまで僕は多くの人に、「なぜ総合診療医は(従来の)専門医と同列にならなければならないのですか。欧州のようにGPと専門医は立場が異なることをはっきりさせればいいのではないですか」と質問してきたが、納得できる回答を得たことは一度もない。海外のように、GPがしっかりとゲートキーパーの役割を果たし、病院や専門クリニックにつないでいくのが理想だと思うのだが、なぜかこの考えは支持されない。

 このように分かりにくい状況下で、2019年5月に開催された連合学会の学術大会では、学会として独自に、総合診療専門医の新専門医資格として、「新・家庭医療専門医」「病院総合診療専門医」「在宅や緩和などのサブスペシャルティ専門医」を創設する方針が発表された(関連記事:プライマリ・ケア連合学会、総合診療医にサブスペシャルティ創設へ)。どうも、これは、専門医機構のサブスペシャルティとは異なる、学会独自のものらしい。

 19番目の専門医については、いまだにはっきりと理解されておらず決着がついていないようにみえるのに、さらに話が複雑になってしまったようだ、と感じるのは僕だけだろうか。

著者プロフィール

たにぐち やすし氏●1991年関西学院大学社会学部卒。商社勤務を経て、2002年大阪市立大学医学部卒。研修医終了後、タイのエイズ施設でのボランティアを経て大阪市立大学医学部総合診療センター所属となり、現在も同大非常勤講師。2007年に大阪・梅田に開業。日本プライマリ・ケア連合学会指導医。労働衛生コンサルタント。

連載の紹介

谷口恭の「梅田のGPがどうしても伝えたいこと」
患者さんに最も近い立場で医療を行いたい……。それを実現するため医師6年目に資金300万円で開業した谷口氏。「どのような人でも、どのような症状でも受け入れる」をポリシーに過去11年で3万人以上の初診患者を診察した経験を基に、開業医のやりがいや苦労、開業医に求められるミッションを若手医師向けに語ります。

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