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熱心な看護師と受付スタッフはどこにいる?

2019/05/10
谷口 恭(太融寺町谷口医院)

 「開業して良かったことは何ですか?」と尋ねられるといつも「スタッフと共に働けることです」と答えている。短い人生の貴重な時間を一緒に過ごし、患者が健康になれるように共に努力をするのである。スタッフと話し合いを重ね“一体感”を自覚できたとき、僕は最高に幸せを感じる。この喜びは何物にも変え難いものだ。

 過去のコラムで述べたように、開業前に「開業は患者のためと言えるのか、自分のためではないのか」と悩んだことがあった。結局、この答えは今も出ていないのだが、開業して初めて分かったことがある。それは、ある意味で患者よりもスタッフの方が遥かに大切ということだ。

 職業に貴賤がないのは事実だとしても、医療機関はやはり他の職場とは異なると思う。何しろ「健康」「生命」という自身にとって最も大切なことを相談する場所なのだ。中には家族にすら話せないことを相談しに来る者もいる。我々はそれを受け止めなければならない。僕も真剣だが、他のスタッフもひたむきな姿勢となる。1人の患者に対して話し合いを行う。看護師だけでなく受付スタッフも意見やアイデアを述べる。

 話し合いをいくら重ねても患者に貢献できないことがあるのは事実だが、それでもこういった時間は無駄にはならない。そして、患者のために一生懸命な姿勢を見せるスタッフを思うとき、僕は彼女らのためにもっと頑張らねば、と身を引き締めるのだ。大きな病院であれば「他部署との壁」や「組織の論理」というものに抗えず、せっかく話し合いをしても「どうせうちではできないし……」となることもあろうが、幸いなことに診療所はそういった“大企業病”に悩まされることがない。人にはいろんな考えや価値観、趣向があるのだからこの考えを他人に押し付けるつもりはないが、僕は診療所での勤務ほど幸せな仕事はない、とすら思っている。

著者プロフィール

たにぐち やすし氏●1991年関西学院大学社会学部卒。商社勤務を経て、2002年大阪市立大学医学部卒。研修医終了後、タイのエイズ施設でのボランティアを経て大阪市立大学医学部総合診療センター所属となり、現在も同大非常勤講師。2007年に大阪・梅田に開業。日本プライマリ・ケア連合学会指導医。労働衛生コンサルタント。

連載の紹介

谷口恭の「梅田のGPがどうしても伝えたいこと」
患者さんに最も近い立場で医療を行いたい……。それを実現するため医師6年目に資金300万円で開業した谷口氏。「どのような人でも、どのような症状でも受け入れる」をポリシーに過去11年で3万人以上の初診患者を診察した経験を基に、開業医のやりがいや苦労、開業医に求められるミッションを若手医師向けに語ります。

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