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嗚呼、素晴らしき外来

2019/03/08
谷口 恭(太融寺町谷口医院)

 タイでのボランティアから帰国し、母校の大阪市立大学の総合診療部の門を叩いた僕は、本格的なGPを目指し勉強を開始することにした。だが、予想通り、大学だけでは学びたいことの一部しかできないことをすぐに再認識した。

 そこで僕は大学の総合診療科の自分自身の外来を週に1回持たせてもらい、あと2日は半日ずつ総合診療科の他の先生の外来を見学し、それ以外の時間は他の診療所や病院に見学に行くこととした。大学も他院も見学は無給なので、複数の診療所と病院で外来のアルバイトをさせてもらい(といっても未熟な僕は先輩医師たちの助言が必要だったのだが)、平日は週に4~5日の当直勤務、土日はひっきりなしに患者が来る救急外来で働いて生活費を賄っていた。

 今考えても、いったいいつ寝ていたんだろうと思わずにはいられない過酷な毎日で、労働基準法を照らすと許されないのかもしれないが、当時の僕にとっては一つひとつの症例が貴重だった。そして、僕はとても幸運だった。素晴らしい先生たちの指導を受けることができたからだ。

 過去のコラム(関連記事:臨床が好きになった日と開業が近づいた日)で述べたように、もともと医師になることを考えていなかった僕が一気に臨床が好きになったのは、6回生のある日、ある病院の夜間救急外来を見学させてもらったときで、これを機に通常の外来に対する興味も一気に高まった。研修医になってからも先輩医師の外来見学は僕の楽しみの1つだった。

 改めて「外来」というものを考えてみると、初診時には全く見ず知らずの2人(患者と医師)がかなり込み入った話を行う時空間である。症状や疾患の種類によっては、家族にさえ伝えたくないことを初対面の医師が聞くことになる。「面白い」という言葉は不謹慎かもしれないが、僕にとって医師の仕事の醍醐味の1つは「初診時の外来」だ。先述のコラムでは臨床が好きになった救急外来の一晩のことを述べたが、僕が魅かれたのは「救急医療」というよりも様々な患者が次から次へとやってくる「外来」自体なのだと後から思うようになった。

 数年前から医学部の4回生を対象とした「医療面接」の実習にファシリテーターとして参加している。これも無給で、参加するためにクリニックを閉めなければならないが、断らずに続けているのは若い医学生にこの「初診時の外来」の面白さを伝えたいからだ。

 話を戻そう。大学の総合診療部に籍を置きながら、知り合いの先生のつてを頼って、内科、皮膚科、整形外科などのクリニックを見学させてもらうことができた。期間は、1日だけの所から、1年以上通い続け最終的にはそこでアルバイトをさせてもらうようになった所まで様々となった。ここでは、そんな中で特に勉強になった2人の先生から学んだことを紹介したい。

著者プロフィール

たにぐち やすし氏●1991年関西学院大学社会学部卒。商社勤務を経て、2002年大阪市立大学医学部卒。研修医終了後、タイのエイズ施設でのボランティアを経て大阪市立大学医学部総合診療センター所属となり、現在も同大非常勤講師。2007年に大阪・梅田に開業。日本プライマリ・ケア連合学会指導医。労働衛生コンサルタント。

連載の紹介

谷口恭の「梅田のGPがどうしても伝えたいこと」
患者さんに最も近い立場で医療を行いたい……。それを実現するため医師6年目に資金300万円で開業した谷口氏。「どのような人でも、どのような症状でも受け入れる」をポリシーに過去11年で3万人以上の初診患者を診察した経験を基に、開業医のやりがいや苦労、開業医に求められるミッションを若手医師向けに語ります。

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