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性感染症をGPが診るべきこれだけの理由

2019/01/11
谷口 恭(太融寺町谷口医院)

 正月を返上し医師国家試験のラストスパートに突入していた2002年1月中旬のある日、自習室の机に置いていた携帯電話がブルブルと震えだし懐かしい名前が表示された。悪友のNだ。Nは僕が18歳のときにアルバイト先で知り合った同い年の友人で当時はよくつるんでいたが、医学部に入学してからはほとんど会っていなかった。

 「おお、谷口。久しぶりやのぉ。実は困ったことがあってな…」

 昔からNからの電話はろくなものがないことを思い出した。

 「お前にも近いうちに紹介しよ思とったんやけどな、最近新しいヨメ(注:交際相手のこと)ができたんや。それでそのヨメから泌尿器科へ行ってと言われてな。なんでやって聞いたらクラミジア言うんや。そういえば最近しょんべんするときおかしいな思てて、あと陰毛がかゆいんや。ヨメが行った婦人科は男は診てくれへんらしいんで、ヨメに付いてきてもろて泌尿器科行ったんや。それで医者からあれこれ聞かれてな。医者の口調がきついもんやから横にいたヨメが泣き出しよってな。おまけに痒みはケジラミかもしれへんけど、それは皮膚科へ行け言われてな。こらあかんわ思て、もうええわ! 言うて大声出して帰ったったんや……」

 ガラの悪いNが医師に暴言を吐いている姿が目に浮かぶ……。しかしNにも怒りの理由があるようだ。Nの大阪弁はこれくらいにして要点を簡潔にまとめてみよう。

 Nの交際相手(ここからはMさんとする)が泣き出したのは、前医(婦人科)で「ひどいこと」を言われたことを思い出したからだという。MさんはクラミジアをNにうつしていたらどうしようという思いから婦人科医に「本当のこと」を話した。それはMさんが過去にセックスワークをしていたことだった。すると、医師のみならず同席していた看護師からさんざんひどいことを言われ泣き出してしまったそうだ。そして、Nに付いていった泌尿器科でその時の記憶が蘇り、涙があふれてきたのだ。

著者プロフィール

たにぐち やすし氏●1991年関西学院大学社会学部卒。商社勤務を経て、2002年大阪市立大学医学部卒。研修医終了後、タイのエイズ施設でのボランティアを経て大阪市立大学医学部総合診療センター所属となり、現在も同大非常勤講師。2007年に大阪・梅田に開業。日本プライマリ・ケア連合学会指導医。労働衛生コンサルタント。

連載の紹介

谷口恭の「梅田のGPがどうしても伝えたいこと」
患者さんに最も近い立場で医療を行いたい……。それを実現するため医師6年目に資金300万円で開業した谷口氏。「どのような人でも、どのような症状でも受け入れる」をポリシーに過去11年で3万人以上の初診患者を診察した経験を基に、開業医のやりがいや苦労、開業医に求められるミッションを若手医師向けに語ります。

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