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第1回
僕らが外国人を診る理由

2018/07/27
谷口恭(太融寺町谷口医院)

 僕はどちらかというとおだやかな性格だと思う。プライベートでは、よほどのことがない限り自分からけんかをふっかけることはないし、医療の現場では、先輩医師や同僚医師に声を荒げたことは(たぶん)ない。また、看護師や薬剤師などパラメディカルの人たちにも大声を出したことは(数えるほどしか)ない。だけど、他院の受付や事務の人たちに怒り心頭に発したことが何度かあることを告白する。原因はいつも同じ。外国人の患者紹介、である。

 例えば、とある大学病院の電話対応。

僕:「紹介させてもらってよろしいでしょうか。30歳代女性で背部にケロイド様瘢痕があり手術を希望されています。オーストラリア人で、日本語はできませんが、もちろん英語はできます」

大学病院:「日本語できないんですか~。だったら通訳連れて来てくれるんですよね。通訳をこちらで用意することはできませんから、患者さんひとりで受診するならうちは診られません」

僕:「もういいです!」

 ある市民病院の対応(ちなみに同院には英語のウェブサイトもある)。

僕:「紹介させてもらってよろしいでしょうか。40歳代男性で2カ月前から咳が続いています。当院のX線で間質性肺炎を疑っています。インドネシア人ですが、英語は問題ありません」

市民病院:「日本語できないんですか。だったら通訳を手配します」

 そして前日の夜、仕事の都合で受診できなくなった患者さんは同院に電話をした(が、おそらく英語でコミュニケーションが取れなかった)。翌朝、同院から当院にクレームが。「患者さんが来なかった。通訳をわざわざ呼んだのに」とのこと。英語で患者さんからの話が聞けないそちらの対応が問題じゃないの!?

 次は大阪市内のAクリニック。僕はAクリニックの院長先生を直接存じないが、医師会が作成している英語対応可の医療機関リストに掲載されているため紹介状を作成した。念のため同クリニックに電話で確認することに。

Aクリニック:「院長先生は英語で診察されますから来てもらってもかまいません。ですが受付は英語ができませんから、患者さんからの電話はやめてください……」

 同院は少し分かりにくいところに位置しているため、患者さんにはgoogleの地図のコピーを渡したが、「電話NG」という同院の対応に本人は意気消沈。結局、2カ月後の帰国時に自国の医療機関を受診することになった。

著者プロフィール

たにぐち やすし氏●1991年関西学院大学社会学部卒。商社勤務を経て、2002年大阪市立大学医学部卒。研修医終了後、タイのエイズ施設でのボランティアを経て大阪市立大学医学部総合診療センター所属となり、現在も同大非常勤講師。2007年に大阪・梅田に開業。日本プライマリ・ケア連合学会指導医。労働衛生コンサルタント。

連載の紹介

谷口恭の「梅田のGPがどうしても伝えたいこと」
患者さんに最も近い立場で医療を行いたい……。それを実現するため医師6年目に資金300万円で開業した谷口氏。「どのような人でも、どのような症状でも受け入れる」をポリシーに過去11年で3万人以上の初診患者を診察した経験を基に、開業医のやりがいや苦労、開業医に求められるミッションを若手医師向けに語ります。

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