
中高年女性には“健康オタク”が多いことを念頭に置き、血液検査などで大きな変化が見られた場合は、食生活の変化、特に食材の過剰や行き過ぎた制限について、問診する必要がある。
75歳の女性Nさんは、高血圧にて通院していた。カリウム摂取が血圧を下げると聞いて、テレビの健康番組にも出演する医師の著書に書かれている生ジュースを作って飲み始めた。2週間で体重が1~2kg減少し、喜んでいた矢先、当院で血液検査を行ったところ、血清カリウム値が5.8mEq/Lだったため、せっかくの健康法も中断することになった。確かに、前回の結果でも5.2mEq/Lとやや高めだったことからすれば、当然の結果だった。
80歳の女性Oさんは、甲状腺機能低下症のため、甲状腺ホルモン製剤を服用してきた。あるとき、定期的な血液検査の結果、TSH(甲状腺刺激ホルモン)が571.00μIU/mLまで上昇していた。それまでのTSHは16.60μIU/mLであり、あまりにも急激に上昇したため、私が「急に悪くなっていますが、何か、最近よく食べているものがありますか」と質問すると、Oさんは「実は、知人から海苔をたくさんもらって、毎日4袋(5枚入り)ずつ食べていたんです」と話された。Oさんも「本当に、そんなに急に悪くなるのですか」と半信半疑だったが、食事指導により、その後、TSHは7.88μIU/mLまで低下した。
最近、健康をテーマにしたテレビ番組が毎日のように放映されている。特に、みのもんた氏がゲスト医師と健康法を伝授するお昼の番組は人気があり、女性に多い“健康オタク”への影響力が大きい。私も出演したことがあるが、スタジオは“健康オタク”の中高年女性で熱気さえ感じられた。番組は、一応、台本に沿って進行することになっていたが、生放送なので、細かな変更に対応するのが大変だった。特に、みの氏が思いつきで質問したときは、答えに苦労した。それも、みの氏の健康知識が豊富だからだろう。
コレステロール値による食事療法は女性には不向き
昨年、私が出演した同番組の「コレステロールの多い食材を健康食に変える食べ方」は人気があったため、この4月に出版された番組本(年4回発行)でも紹介されている。その中で、「最近の研究でも、卵を1日1~2個食べるとコレステロール値の上昇が抑えられ、動脈硬化、高脂血症、脂肪肝の予防になることが確認されています」と書かれている。
一方で、現在、臨床の現場では、「卵はコレステロールを多く含むので、コレステロール値が高めの人は、朝、卵を1個食べたら、その後は卵や内臓を含む食品(ししゃも、うに、しらすなど)などのコレステロールの多い食品は極力避けるようにしましょう」という食事指導が行われている。この食事指導は、本当に有益なのだろうか。
日本人のコレステロール摂取は、1日平均300~500mgだが、米国のNCEP(ATPIII)では1日200mg以下に制限している。これまでの日本におけるスタチンに関する臨床試験でも、コレステロールの摂取は1日300mgを目標に、コレステロール低下がないときは200mgへと目標が厳しくなる。ところが、コレステロール含量の多い卵の摂取と血清コレステロールの関係については、短期的にはコレステロール値を上昇させるが、長期的には上昇が見られないだけでなく、前述のように動脈硬化、高脂血症、脂肪肝の予防になるという報告もある。