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連載第10回
喫煙は女性の敵!

2006/06/12

「女性の喫煙は、男性以上にリスクが高いのですよ。がんばって禁煙しましょう」--女性の禁煙サポートは重要だ。

 若いころよりたばこを毎日10本ほど吸ってきたという72歳の女性Mさんは、ある日、頭痛などの症状で受診。血圧が200/100mmHgと高く、長時間型血圧測定でも高血圧を認めたため、降圧薬の処方を開始した。また、蛋白尿と低蛋白血症、血清クレアチニンの上昇とIIb型の高脂血症を合併しており、ネフローゼ症候群も疑われた。

 その後、Ca拮抗薬アンジオテンシンII受容体拮抗薬ARB)を併用し、血圧が170/80mmHgまで低下した1週間後、正午ごろに嘔吐、首から肩、前胸部にかけて痛みが出現し、急きょ受診した。心電図では、2度房室ブロックと胸部のV5、6にST低下を認め、心エコーでは下壁の壁運動が低下していたことから、急性心筋梗塞(下壁)と診断し、地域の基幹病院に紹介した。

 すぐに冠動脈造影が行われ、右冠動脈#1に完全閉塞を認めたため、血栓吸入後PCI経皮的冠動脈形成術)が施行された。また同時に、右総腸骨動脈完全閉塞も見付かり、大腿―大腿動脈交叉バイパス手術を受け、無事退院した。

 本例では、リスク因子としては高血圧と高脂血症があるが、心筋梗塞だけでなく閉塞性動脈硬化症を合併している点からすると、喫煙の影響が大きいといえるだろう。

喫煙の悪影響は女性の方が大
 喫煙は、HDLコレステロールの低下、中性脂肪の高値、交感神経刺激作用、フィブリノーゲン高値、血小板凝集亢進を引き起こすほか、血管内皮を障害するなど、動脈硬化の発症に大きく関与している。また喫煙は、冠動脈攣縮の最大のリスク因子でもある。

 さらに女性では、喫煙によってエストロゲン産生の低下、エストロゲン代謝の促進、アンドロゲンの増加などが引き起こされ、抗エストロゲン作用をもたらすことが分かっている。その結果、喫煙者では非喫煙者に比べて、約2年閉経が早まることが報告されている。米国で行われた看護師を対象とした研究では、喫煙者で閉経が早まることが、心血管疾患のリスク因子であることが示されている。心臓病による突然死とリスク因子の関係では、喫煙は年齢にかかわらず、また糖尿病や高血圧などと同じく、約3倍リスクを高めることが報告されている(表1)。

著者プロフィール

田中裕幸(ニコークリニック理事長)●たなか ひろゆき氏。1978年長崎大卒。久留米大第三内科、大牟田市立病院(現大牟田総合病院)循環器科医長、春陽会上村病院循環器科医長を経て、94年に開業。

連載の紹介

【臨床講座】中高年女性を診る
同じ生活習慣病の中高年患者といっても、男性と女性では様々な違いがあります。循環器疾患におけるリスク因子(高脂血症、高血圧、糖尿病など)の性差を中心に、中高年女性を診察する際のポイントを解説します。

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