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連載第6回
スタチンは脳梗塞の発症を予防するか

2006/05/15

 76歳から高血圧高脂血症で通院していたEさんは、高齢の夫と2人暮しで、85歳を超えたころから、徐々に体力や気力が低下し、定期的な受診が困難になったため、在宅で経過を診ていた。ところがある日、訪問した孫から「おばあちゃんの容体がおかしいので、すぐ来てください」と連絡があった。すぐに往診したところ、右の不全麻痺と軽い言語障害があったため、地域の基幹病院へ救急車で搬送し、搬送先で脳梗塞と診断された。

 発症前、Eさんには、降圧薬Ca拮抗薬アンジオテンシンII受容体拮抗薬ARB)の併用)とスタチンが処方されていたものの、血圧は120-180/50-100mmHgと変動が大きく、脂質は総コレステロール257mg/dL(LDLコレステロール146 mg/dL)、HDLコレステロール94mg/dL、中性脂肪85mg/dLだった。Eさんは、高血圧と高脂血症を合併していたが、いずれも脳梗塞のリスク因子だったのだろうか。また、スタチンはこれまで脳梗塞の発症を予防していたのであろうか。

脳梗塞の予防が最重要
 わが国において、1985年と2002年を年齢階級別に比較した場合、脳梗塞による死亡は男女とも減少傾向にあるが、虚血性心疾患は明らかに男女で病態に違いがある。女性では虚血性心疾患、脳血管疾患ともに、加齢により急激に増加するのだ。

中でも脳血管疾患を病型で分けてみると、脳出血や脳梗塞は、同年齢では男性に多い疾患だが、クモ膜下出血だけは特別で、50歳代後半になってくると男性より女性に多いという特徴がある。最近では、降圧薬治療により脳出血は激減しているため、結局、脳梗塞の予防が最重要といえるだろう。

 脳梗塞は、アテローム型、ラクナ型、脳塞栓症の3つに分類される。最近の食生活の欧米化により、頭蓋内外の主幹動脈のアテローム硬化が原因であるアテローム型の増加を思いがちだ。しかし久山町研究によると、男性ではアテローム型が増加傾向がみられるものの、女性では今でもラクナ型が多い(図1)。ラクナ型は、通常200μm以下の穿通枝動脈末梢の脂肪変性や血管壊死によって閉塞する機序のほか、穿通枝の近位部に生じたアテローム硬化などによっても起こる。とはいっても、高血圧や加齢が大きな要因であり、コレステロールの低下はむしろリスク因子だと考えられている。

著者プロフィール

田中裕幸(ニコークリニック理事長)●たなか ひろゆき氏。1978年長崎大卒。久留米大第三内科、大牟田市立病院(現大牟田総合病院)循環器科医長、春陽会上村病院循環器科医長を経て、94年に開業。

連載の紹介

【臨床講座】中高年女性を診る
同じ生活習慣病の中高年患者といっても、男性と女性では様々な違いがあります。循環器疾患におけるリスク因子(高脂血症、高血圧、糖尿病など)の性差を中心に、中高年女性を診察する際のポイントを解説します。

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