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病院側に3億円超の賠償判決、高額になった訳

2022/05/24
田邉昇(弁護医師、中村・平井・田邉法律事務所)

 2022年4月20日に鹿児島地方裁判所で、当時20歳代の研修医が発症した脳膿瘍への対処が遅れ寝たきりになったとして、きわめて高額の賠償責任が認められた。3億2714万4245円ということで、驚かれた読者の方も多いのではないだろうか。脳性麻痺の事案など、賠償額が遅延損害金などを含め2億円近くなるケースも多い。

 寝たきりになった場合の損害としては後遺障害等級1級の慰謝料や生涯にわたる介護費用などがあるが、被害者が医師であろうと特に資格を持たない無職者であろうと、この額はほぼ同じである。

 本件でも入院雑費15万4500円、入院付添費66万9500円、4カ月くらいの入院についての慰謝料160万円、寝たきりになった後遺障害慰謝料2800万円などが認められている。基本的に、損害賠償の計算については交通事故の基準をほぼそのまま当てはめて計算する仕組みになっているので、どんなケースであれ、このあたりは金額が大きく変わらない。

 健康な人が被害者となる交通事故と異なり、診療関連の訴訟の原告は傷病があるのが前提だが、もともと疾病を有していることなども、あまり裁判所は斟酌しない。ただし、これは診療行為に過失がなければ、十中八九元気になったという因果関係の立証があった場合の話である。ここが、もっと良くなった可能性もあるけれど、「十中八九」までは言えない「相当程度の可能性」の場合は、この「元気になった相当程度の可能性」への侵害として一定の慰謝料(数百万円が相場である)の賠償責任が生ずるとされている(最高裁平成15年11月11日判決)。

著者プロフィール

たなべ のぼる氏〇 1984年に名古屋大卒。都立駒込病院に勤務し、名古屋大学大学院で血液内科学を専攻する傍ら、救急医療、臨床腫瘍学などにも従事。旧厚生省などでの勤務を経て2001年に弁護士登録。診療を行う傍ら、医師の視点で弁護士として、非常勤裁判官として、医療訴訟を中心に多くの事件を担当。中村・平井・田邉法律事務所に所属。

連載の紹介

弁護医師・田邉昇の『医と法の視点』
話題の医療・医学に関連したニュースを、臨床医(総合内科専門医・血液専門医)でもあり、旧厚生省の勤務経験を持つ田邉昇氏が、法律家の立場で易しく解説します。

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