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酒の提供を取り締まれなかった行政とその背景

2021/11/29
田邉昇(弁護医師、中村・平井・田邉法律事務所)

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行には山と谷がある。谷の時期の今こそ、「あの時のCOVID-19をめぐる“エラい人たち”の発言は正しかったのか」「国民を翻弄したあの対応は何らかの根拠にのっとっていたのか」などと振り返り、間違っていたのなら撤回し、必要なら反省し、今後につなげる努力は必要だろうと思う。しかし、どうも今、「COVID-19流行期の振る舞いは過ちも含めて一旦、忘れてしまえ」という雰囲気になっているように見える。

 日本で2021年の夏から秋にかけてあった波が「COVID-19第5波」で、それと比べれば第1波はわずかな波だった(「さざ波」と発言して叱られた大学教授がいた)。その第1波が引いたときには、「BCG説」「インバウンドによる先行集団免疫説」「日本は民度が高いから説」「ファクターX説」といった話がまことしやかに語られていた。第2波、第3波の頃は「PCR検査の実施数が日本は少ないからけしからん」だの「ITの活用がなっていない」と叫んでいる人もいたが、PCR、IT先進国のシンガポールも2021年10月末にかけて大きな波を経験している。ゼロコロナを目指す国もあるが、その方針は正しいのか。インフルエンザでは一般市民の着用に否定的な論文も多いマスクだが、COVID-19では有効性を示す論文が多い。これはなぜなのか。政府に対して、「科学的な対応ができていない」と叫んでいた人の主張は科学的だったのか。

 日本経済団体連合会(経団連)は評論家を使って医療批判を展開して、「病床さえ確保しておけば、いくら感染者が増えても経済活動優先だ」と言うし、「テレワークなんかもうやめたい」と勝手なことを言っている。そもそもCOVID-19を上手に活用して新ビジネスを生み出そうという機運が目立たないのは、日本経済が今や三流になったのを見せつけられているようである。

著者プロフィール

たなべ のぼる氏〇 1984年に名古屋大卒。都立駒込病院に勤務し、名古屋大学大学院で血液内科学を専攻する傍ら、救急医療、臨床腫瘍学などにも従事。旧厚生省などでの勤務を経て2001年に弁護士登録。診療を行う傍ら、医師の視点で弁護士として、非常勤裁判官として、医療訴訟を中心に多くの事件を担当。中村・平井・田邉法律事務所に所属。

連載の紹介

弁護医師・田邉昇の『医と法の視点』
話題の医療・医学に関連したニュースを、臨床医(総合内科専門医・血液専門医)でもあり、旧厚生省の勤務経験を持つ田邉昇氏が、法律家の立場で易しく解説します。

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