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「自粛要請に従わずコロナで休んだら無給」はアリかナシか

2021/03/11
田邉昇(弁護医師、中村・平井・田邉法律事務所)

 前回に引き続いて東京女子医科大学のネタで恐縮である。話題性に事欠かないと言うべきか、マスコミやウェブメディアが殊更、この大学について書き立てる明確な理由までは分からないが、検索すると様々な事件が出てくる。

 今回は、労働問題に関するゴタゴタである。実は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行後、東京女子医科大は学生や労働者とのCOVID-19対応に関して、こうしたゴタゴタが何度も起きているようだ。

 例えばCOVID-19の流行が始まりつつあった2020年2月末、同大学は感染拡大防止のため授業を停止し、学生や教職員を自宅待機させていた。これは当時、多くの大学が取っていた処置で、やむを得ないことだろう。

 しかし、2020年5月11日に、学長、医学部長、看護学部長、両学部の教務委員長の連名で「6月登校にむけての準備のご案内」という文書を出した。その上で、父母会の積立金を使って全学生に対してPCR検査を一律に実施する通知をしている。「感度70%程度のPCR検査で、一体何をしようというのか」と感染症専門医から批判が集まったことは記憶に新しい。

 さらにはCOVID-19の“第1波”の際、2020年4月からの緊急事態宣言などの影響で外来収入が悪化したとのことで、同大学は職員の一部を「一時帰休」として自宅待機させた。その間の給与を4割減として職員から反発を受けた。加えて、同年7月には夏のボーナス不支給との方針を打ち出し、全体の5分の1に当たる看護師400人が退職の意向を示す騒ぎになり、あわててボーナスを支給する方向に転じたことも報道されている。

 COVID-19の流行は最近では経験のない「想定外の事態」であるため、後知恵であれこれ言うべきではないのだろうが……。前回のコラムで取り上げたプロポフォール事件を含め、職員を守ろうという気持ちが見えにくい組織だと感じてしまう。

著者プロフィール

たなべ のぼる氏〇 1984年に名古屋大卒。都立駒込病院に勤務し、名古屋大学大学院で血液内科学を専攻する傍ら、救急医療、臨床腫瘍学などにも従事。旧厚生省などでの勤務を経て2001年に弁護士登録。診療を行う傍ら、医師の視点で弁護士として、非常勤裁判官として、医療訴訟を中心に多くの事件を担当。中村・平井・田邉法律事務所に所属。

連載の紹介

弁護医師・田邉昇の『医と法の視点』
話題の医療・医学に関連したニュースを、臨床医(総合内科専門医・血液専門医)でもあり、旧厚生省の勤務経験を持つ田邉昇氏が、法律家の立場で易しく解説します。

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