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「任命」とは何か~日本学術会議の議論から~

2020/11/18
田邉昇(弁護医師、中村・平井・田邉法律事務所)

 日本学術会議のメンバーについて、学術会議側が推薦した名簿の中から6人を内閣総理大臣が任命しなかった問題が、発覚から1カ月以上たっても続いている。

 基本的には、学問の自由(憲法23条)への侵害行為だとする野党などの主張と、任命権者には裁量があるから誰を任命しようとしまいと勝手ではないかという政府官邸側の主張が相対しているが、この他にも、論点はずれているものの、「そもそも日本学術会議なんて役に立つのか」「人選は本当によいのか」といった発言をする人がいる。先日、ニュースで某政党のお偉いさんが、「日本学術会議は『学者の国会』と言うが、国会のように国民の選挙で選ばれていないのだからおかしい」などと発言していた。大日本帝国憲法下の貴族院や英国のHouse of Lords(貴族院、上院)のように、公選されない「国民」代表機関はいくらでもある。彼は国会という概念をよく理解していないのだろう。

 トンチンカンな見解も飛び交うが、最近の日本は右派と左派がインターネット上でガチンコの議論をするようになっており、昔のように左翼的な議論以外は口にできない時代に育った人間からは隔世の感がある。と言ってもネット上の議論は、口を極めてののしるタイプが多いようである。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行で、現実の場での口角泡を飛ばしての議論は減ったように思われるが、一方でネット上の議論は相変わらず激しい。しかし、ネット上の議論は記録が残るし、匿名だと思ってもプロバイダーへの情報開示請求などの手段を用いれば、発信者の特定が可能であることに注意した方がよい。場合によっては名誉毀損による刑事罰もあり得るので、表現の仕方については自制が求められよう。

著者プロフィール

たなべ のぼる氏〇 1984年に名古屋大卒。都立駒込病院に勤務し、名古屋大学大学院で血液内科学を専攻する傍ら、救急医療、臨床腫瘍学などにも従事。旧厚生省などでの勤務を経て2001年に弁護士登録。診療を行う傍ら、医師の視点で弁護士として、非常勤裁判官として、医療訴訟を中心に多くの事件を担当。中村・平井・田邉法律事務所に所属。

連載の紹介

弁護医師・田邉昇の『医と法の視点』
話題の医療・医学に関連したニュースを、臨床医(総合内科専門医・血液専門医)でもあり、旧厚生省の勤務経験を持つ田邉昇氏が、法律家の立場で易しく解説します。

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