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「あずみの里」控訴審、証拠ほぼ不採用の背景

2020/03/18
田邉昇(弁護医師、中村・平井・田邉法律事務所)

 新聞やテレビなどではほとんど報道されていないし、日本医師会や日本看護協会がこれに対して何らかのメッセージを発した形跡はないようだが、医療現場に多大な影響を及ぼすとみられる事件がある。

 長野県で起きた「あずみの里」事件である。これは、2013年12月12日、長野県安曇野市の特別養護老人ホーム「あずみの里」で、当時85歳の女性入所者がおやつのドーナツを食べている途中に急変し、約1カ月後に死亡した事案だ。

 既に施設開設者と遺族との間では示談が成立していて、1000万円を超える賠償金が支払われているにも関わらず、配膳などに関与していた准看護師が業務上過失致死罪で起訴され、第一審では罰金20万円の有罪判決が下されている(長野地方裁判所松本支部平成31年3月25日判決)。

 控訴審では弁護側が、脳神経外科、救急医療、オートプシー・イメージング(Ai)の専門家の意見書3通を追加で証拠提出した。いずれの意見書でも、被害者の意識消失はドーナツを誤嚥したことによる窒息ではなく、脳梗塞によるものである可能性が高いことを指摘しているが、東京高裁は証拠採用すらしなかった。

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著者プロフィール

たなべ のぼる氏〇 1984年に名古屋大卒。都立駒込病院に勤務し、名古屋大学大学院で血液内科学を専攻する傍ら、救急医療、臨床腫瘍学などにも従事。旧厚生省などでの勤務を経て2001年に弁護士登録。診療を行う傍ら、医師の視点で弁護士として、非常勤裁判官として、医療訴訟を中心に多くの事件を担当。中村・平井・田邉法律事務所に所属。

連載の紹介

弁護医師・田邉昇の『医と法の視点』
話題の医療・医学に関連したニュースを、臨床医(総合内科専門医・血液専門医)でもあり、旧厚生省の勤務経験を持つ田邉昇氏が、法律家の立場で易しく解説します。

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